今までの蓄電池システムは、一日の中で、電気を貯めたり放電(電気を使用)したりする時間が決まっていました。例えば、昼間が割高で夜間が割安な料金プランで電力会社と契約している場合は、夜間に充電し、電気料金が割高になる朝から放電すると、太陽光による発電と合わせて、昼間の電力の購入を抑えることができます。
しかし、雨の日など太陽光発電が十分でない場合、朝から放電してしまうと、蓄電池の残量が不足するため、昼間に割高な電力を購入することになります。 天候状態に合わせて、放電を開始する時間を自動的に変更できたら、便利だろうな・・・。 実現するアイデアがなかなか思い浮かばず悩んでいた時、テレビを見ていてハッと気づきました。「そうだ、天気予報だ!」。外出する時に天気予報を見て、傘を持っていくかを判断していることを思い出したのです。 これこそ、クラウドの出番です。インターネットと繋がっているからこそ、天気予報をもとにしたコントロールができるはずです。試行錯誤を重ねながら開発を進め、クラウドサーバー上に、天気予報の情報を加味した制御プログラムを開発しました。太陽光発電の天敵である雲に、ITネットワークの雲(クラウド)で対抗したのです。
「クラウド蓄電池システム」は、当社製「クラウドHEMS(Home Energy Management System)」と組み合わせることで、日常の電力使用状況や天候に応じて、充放電を自動的に制御するので、電気料金の削減が図れます。
また、計画停電時の電源確保についても検討を重ねました。クラウドサーバーに政府から発令される「電力需給逼迫警報」を入手すると、停電に備えて充電状態のまま待機するような仕組みも実現できました。
太陽光発電システムや蓄電池システムを利用するには、パワーコンディショナと呼ばれる機器が必要で、従来は、太陽光発電用と蓄電池用の各々で2台必要でした。
太陽光発電による電気を蓄電する場合、まず発電した直流の電流を、太陽光発電用のパワーコンディショナが家庭用の交流に変換。さらにこれを蓄電池用のパワーコンディショナが直流に戻していたため、2回の変換による電力ロスが発生していました。
また、発電した余剰電力は通常、電力会社に全て売電できますが、例えば周辺に太陽光発電システムが数多く設置されている地域では、よく晴れて売電量が多くなると商用系統(電線)の電圧が高くなることで出力抑制がかかり、全ての余剰電力を売電できないことがあります。加えて、売電する場合、パワーコンディショナから電力会社への1系統(1方向)の電力の流れしかなく、抑制された電力を蓄電池へ流すような仕様になっていないため、無駄が発生する課題もありました。
これらの課題に対応するため、回路や配線を見直し、パワーコンディショナの一体化を図りました。 一体化のためには、太陽光発電の回路と蓄電池の回路を1つの筐体(箱)におさめるというハードウェアの対応に加えて、1系統の電力の流れを蓄電池にも流れるように2系統に変更させることが必要です。「発電」「充電」「放電」の各ケースに対応するための制御が複雑になり、開発期間もタイトな中、ソフトウェアの構築も非常に困難でした。
そこで、パワーコンディショナのソフトウェア技術者を集結させることにしました。各自がさまざまな業務を担当していましたが、全員がパワーコンディショナのソフトウェア開発に取り組む体制にしました。”三人寄れば文殊の知恵”と言いますが、短期間に一点に集中して開発を進めたことが功を奏し、電力ロスを削減し、出力抑制の課題にも対応したハイブリッドパワーコンディショナを短期間で完成させることができました。
蓄電池本体にも課題がありました。体積・重量が大きく、スペースの問題から設置しづらいという意見がありました。また、設置するには、コンクリートを用いた基礎工事、固まるまでの待ち時間、その後の設置工事と回数も時間も多くかかり、施工コストを何とか削減できないかとの要望もいただいていました。
内部構造の見直しや不要な配線ユニットを削除するなど対策を重ね、屋外設置モデルについては高さが約半分、体積も約30%削減できました。倒れにくいように重心も下げ、簡易基礎による設置が可能になりました。基礎工事が不要になったことで、施工時間やコストも大幅に下がります。
また、従来は屋外での設置のみとなっていたため、塩害の被害が大きい地域や寒冷地※1などへの設置が困難でしたが、こうした小型化の努力の結果、クローゼット等にも置ける屋内設置モデルも新しく生まれました。蓄電池を屋内・屋外のタイプから選択できるのは、シャープだけ※2です。
当社の創業者 早川徳次は、半世紀も前から『将来の最大の課題は、太陽の熱や光を蓄積保存することではないかと私は思っている』と、太陽エネルギーの利用に大きな関心を持っていました。
「太陽光発電システム」・「クラウド蓄電池システム」・「クラウドHEMS」によるエネルギーソリューションで、より安心で豊かな生活の実現に貢献できるよう、シャープはこれからもチャレンジし続けます。
ご家庭でクラウド蓄電池システムをご利用される際は、リチウムイオン蓄電池本体(屋内設置用<JH-WB1401>もしくは 屋外設置用<JH-WB1402>)に加えて、ハイブリッドパワーコンディショナ<JH-42EM2P>、マルチエネルギーモニタ<JH-RWL6V / JH-RWL7>、クラウドHEMS*<JH-RTP4 / JH-RTP5>が必要となります。