経営方針
Management Policy

トップメッセージ

代表取締役社長 兼 CEO 沖津 雅浩

信頼の日本ブランド“SHARP”の確立に向けて

信頼の日本ブランド“SHARP”の確立に向けて

2024年6月27日付で、代表取締役社長 兼 CEOに就任しました沖津雅浩です。現在、シャープは将来の飛躍に向けた大変革の真っ只中にいるなかで、社長兼CEOの重責を担うこととなり、大変身の引き締まる思いです。

はじめに

私は1980年の入社以来、シャープ一筋の人間で、シャープを思う強い気持ち、シャープを世界に誇れる会社に成長させたいという気持ちは誰にも負けないと自負しています。

はじめに、そんな私が、先輩方に教わり、現在も経営にあたって大切にしている3つの言葉を紹介させていただきます。

一つ目は、「経営理念・経営信条」です。「経営理念」は当社の目指す姿を、「経営信条」は理念を実現するために堅持すべき信念や考え方を示しています。この二つを大切にしてこそ、他社と異なる視点で独自の価値を生み出してきた“真のシャープらしさ”が発揮できると考えています。

二つ目は、「日々努力 何糞」です。これは、多くの試練を乗り越えた早川創業者の不屈の魂を示す言葉です。私自身、この言葉を心の支えに自らを奮起させ、困難を乗り越えてきました。今は、まさに、この魂を発揮すべき時です。私が先頭に立ち、「何糞」の精神で困難に立ち向かっていきます。

三つ目は、「品質第一 私たちの心です」という、品質スローガンです。私は課長時代に品質問題を起こし、信頼回復に非常に苦労した経験があります。それ以来、品質を第一に考え、お客様に信頼いただくことが何より大切であるという思いを一層強くし、現在も居室にこのスローガンを掲げています。

なすべきこと

当社は、想定以上に厳しい事業環境が続くなか、ブランド事業は着実に利益を確保してきましたが、ディスプレイデバイス事業は業績を大幅に悪化させてしまいました。その結果、2022年度と2023年度の2期にわたり大きな赤字を計上し、財務状況も悪化するなど、会社としてステークホルダーの皆様の期待に応えることができていませんでした。

こうした状況のなかで、当社は、2024年5月14日に「デバイス事業の改革」「新たな成長モデルの確立」「本社機能の強化」を軸とする中期経営方針を発表しました。

具体的な内容は後ほど説明させていただきますが、中期経営方針は私自身も責任を持って策定に携わったものであり、シャープを再生するために不可欠なものです。

決して容易な取り組みではないと認識しておりますが、ステークホルダーの皆様の期待に応えるためにも、CEOとしてこの中期経営方針を最後までやり遂げることが、私のなすべきことだと考えています。

中期経営方針

それでは、中期経営方針について、説明させていただきます。

現状認識と課題

当社は2期連続の営業赤字を計上しましたが、その要因は、ディスプレイデバイスにおける変化への対応遅れにあります。また、シャープの成長が足踏みしている大きな要因は、キャッシュ創出力が向上しない“負のサイクル”に陥ってしまったことであり、次のような構造的課題が存在すると認識しています。

デバイス事業は資本力が競争優位に直結しますが、当社では継続的に十分な投資を行うことができませんでした。そのため、当社のデバイス事業は徐々に競争力が低下し、新たなカテゴリーや顧客等、成長分野の開拓を想定通りに進めることができていません。その結果、需給や価格などの市況の変化に影響を受けやすくなり、安定的に利益を創出することが難しくなっています。

また、こうしたことから、堅調な業績を上げてきたブランド事業においても、将来の成長に向けた投資が制限されてきました。

今後、将来にわたって成長し続けるためには、このサイクルから早期に脱却して、持続可能な収益構造を確立することが重要であると考えています。

業績推移
業績推移
2年間の総括
2年間の総括
構造的課題
構造的課題
基本方針

シャープでは、2028年度以降の大きな飛躍に向け、2024年度を「構造改革」の1年、2025年度から2027年度を「再成長」の3年と位置付け、アセットライト化、及び成長モデルの確立と本社機能の強化に取り組んでいきます。

ここでは、再成長フェーズの最終年度となる2027年度末までに目指す姿を説明させていただきます。

まずは、これまで負のサイクルの原因となっていたデバイス事業のアセットライト化を進めることで「ブランド事業に集中した事業構造」を確立します。

そして、既存ブランド事業から得られる収益を、既存ブランド事業における収益拡大と成長領域へのシフト、さらには新産業分野での事業機会の獲得に活用し、「既存ブランド事業と新産業の“正のサイクル”」を創出します。

あわせて、こうした全社レベルの変革を推進するため、「成長を牽引・支援する強い本社」を構築します。

また、重要なビジネスパートナーである鴻海精密工業股份有限公司(以下鴻海)とは、これまで効率化中心に連携を進めてきましたが、今後は「中長期成長に向けた連携」を一層深めることで、取り組みスピードを一段と加速していきます。

2027年度末までに目指す姿① 2027年度末までに目指す姿②
具体的な取り組み
①アセットライト化(各デバイス事業の方向性)

大きなアセットを抱え、競争力強化に多額の投資が不可欠なデバイス事業については、工場の最適化や他社の力を活用した事業展開へと舵を切っています。

ディスプレイデバイスでは、大型ディスプレイを生産するSDPを2022年に連結子会社化しましたが、市場が大きく変化し、再生計画を遂行することが困難になったため、2024年8月にパネル生産を停止しました。今後は、建屋及びユーティリティを活用したAIデータセンター関連ビジネスや、インド有力企業への技術支援等への事業転換を進めていきます。中小型ディスプレイ事業は、遊休スペースを活用した半導体関連企業との協業や、生産能力の縮小等、工場の最適化を進め、収益改善を図っていきます。

エレクトロニックデバイスのカメラモジュール事業及び半導体事業は、事業の親和性が高く、両者のさらなる成長に資するパートナーに事業を譲渡する方針です。

ディスプレイデバイス
ディスプレイデバイス
エレクトロニックデバイス
エレクトロニックデバイス
②成長モデルの確立

スマートライフ&エナジー、スマートオフィス、ユニバーサルネットワークの3つの既存ブランド事業においては、今後、今まで抑制していた投資を拡大し売上・利益成長を実現するとともに、成長領域へのシフトを加速していきます。

さらに、そこで創出したキャッシュは先端技術にも積極的に投資していきます。そして、鴻海との連携を含め、AIや次世代通信、EV等、成長する新産業分野(Next Innovation)での事業機会の獲得に挑戦し、さらなる事業成長及び企業価値向上を目指します。

こうした取り組みにより、既存ブランド事業と新産業の“正のサイクル”を創り上げ、持続的成長を実現していきます。

2027年度に目指す事業ポートフォリオ
(イメージ)
2027年度に目指す事業ポートフォリオ(イメージ)
新たな成長モデル
新たな成長モデル
(既存ブランド事業の方向性・展望)

既存ブランド事業では、これまで抑制していた投資を拡大することで、収益力の向上を図るとともに、将来の飛躍に向けた事業変革に挑戦します。

それでは、セグメントごとに取り組みを紹介させていただきます。

一つ目は、スマートライフ&エナジーです。既存事業では、健康/環境関連を中心にコア技術を活用して、付加価値の高い商材の売上比率を拡大していきます。また、ASEANや米州を重点地域として海外事業を強化するなど、メリハリのあるエリア戦略を進めます。さらに、事業変革に向け、「家電×AI」による新たな顧客体験の創出や、カーボンニュートラルに関連する需要の拡大を捉えた新商材の展開にも取り組みます。

二つ目は、スマートオフィスです。既存事業では、MFP顧客基盤の維持拡大や、これらを活用したソリューションビジネスを強化します。事業変革に向けては、「AI活用」によるハードウェア/サービスの付加価値向上や、新規参入した物流倉庫などの業務効率化を実現する「ロボティクス事業」の提案力強化に取り組みます。

三つ目は、ユニバーサルネットワークです。既存事業では、開発効率を上げるなど、テレビシステム事業やスマートフォン事業を筋肉質化させていきます。事業変革に向けては、「XR/車載/衛星通信」分野へのリソースのシフトや新たな「AI関連端末」の創出に取り組みます。

こうした取り組みにより、当面の目標として、既存ブランド事業で営業利益率7%の実現を目指します。

既存ブランド事業の方向性・展望
(新産業の方向性・展望)

一方、新産業では、長年にわたり培ってきた独自技術とブランドを活かし、「技術力強化による付加価値向上」、「事業領域の拡大」の2つの切り口から、新たな事業機会(Next Innovation)の探索を加速していきます。

具体的には、多様な顧客接点を持つ当社の強みを活かした「AI」の活用、当社に長年の技術の蓄積があり今後ますますその重要性が高まる「次世代通信」の領域を中心に、開発を加速していきます。

さらに、シャープは人々の生活空間を主な事業領域とし、現在、「ホーム」や「ワークプレイス」を中心に事業を展開していますが、これらに加え、今後は「モビリティ」も一つの生活空間として捉え、シャープらしい新たな価値創出に挑戦していきます。

また、鴻海とも緊密に連携し、鴻海の持つ様々なリソースを積極的に活用することで、取り組みのスピードを一段と向上させていきます。

新産業の方向性・展望
③本社機能の強化

シャープが今後、再び成長軌道へと回帰し、力強く歩みを進めていくためには、これを牽引する「強い本社」を構築する必要があると考えています。特に、「グループマネジメント」「人材戦略」「ブランドマネジメント」「研究開発」「DX戦略」「ESG経営」の6つに重点を置いて強化していきます。

本社機能の強化

おわりに

最後に、中期経営方針を確実にやり遂げるための、新たな業務の執行体制やガバナンス体制についてご説明します。

まず、業務執行の責任者については、当社で長年働いてきたメンバーを中心とする構成にしています。いずれも当社のビジネスに精通しているだけでなく、シャープを思う強い気持ちを持ったメンバーです。

あわせて、より公正・公平・透明なコーポレートガバナンスの構築に向け、取締役会には新たに4名の独立社外取締役に加わっていただきました。いずれも豊富な経験と専門的な知識を持たれており、独立した立場からの業務執行の監督と経営の助言をしていただいています。現在、取締役9名のうち7名が社外取締役となっており、以前に比べて、監督体制が大幅に強化されていると実感できています。

さらに、鴻海の劉董事長に会長に就任いただきました。当社の企業価値向上に向けたアドバイスや、中長期的な成長に向けた鴻海との連携強化などの領域において、サポートいただいています。

私自身が先頭に立ち、こうした体制のもとOne SHARPで一致団結し、信頼の日本ブランド“SHARP”の確立に向けて邁進してまいりますので、引き続きご支援のほど、よろしくお願いいたします。

2024年10月

代表取締役社長 兼 CEO
沖津 雅浩