1901〜1912年

初めて触れる世間は「仕事」と「人情」の教室

東京、本所区(現・墨田区)の錺屋(金属細工業)での徒弟奉公は決して楽なものではありませんでした。主人の坂田芳松氏は、昔気質の職人肌で、仕事には厳しいが情に厚い人でした。
ここで、金属を加工する技術の基礎を仕込んでもらうとともに、人の世の情についても教わりました。
その職人修業生活も順風満帆とはいきませんでした。当初は羽振りの良かった主人が新しい事業に失敗し、窮地に陥ったのです。
主人への恩義を感じる徳次は主人のもとを離れず、店を支えました。借金の原因となったキズ物の鉛筆を夜店で売るという苦労までしますが、その経験がモノを売る情熱や客の心をつかむ商売のコツを徳次の身に染み込ませました。このように、徒弟時代は、これからの実業家人生にとって、必要なことをすべて学んだ場所でした。

1901〜1912年