ディジタル放送の実現と今後の展開

 ディジタル放送の特集号の発刊にあたり,ディジタル放送が実現するまでの技術開発を振りかえると共に,ディジタル放送の今後の展望について述べる。
 ディジタルにより信号を伝送するPCM方式は,1937年にイギリスのA. H. Reevesによって発明された。しかし,当時は回路技術が不十分だったため,実用化されなかった。1948年には,染谷とShannonがそれぞれ標本化定理を発表した。これにより,その後のディジタル符号化の基礎が築かれた。
 テレビ信号のディジタル化の研究は1950年代にアメリカのベル研究所で最初に行われたが,放送へのディジタル技術の利用は,1972年にイギリスの放送機関のIBAによるディジタル式方式変換装置が最初である。IBAはディジタルメモリを使用して装置の小型化と画質向上を実現した。その後,ディジタル技術はVTRのタイムベースコレクタ,フレームシンクロナイザ,特殊効果装置などへ導入された。番組制作機器のディジタル化の進展を背景に,国際電気通信連合(ITU)において,ディジタルテレビ信号の標本化周波数や量子化ビット数などの規格が検討され,1982年に世界統一規格である勧告601が作られた。





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