話せるアーティファクト

 標題の一部となっている「アーティファクト」は,人工物を意味する。自然界に昔からあったものではなく,人間が意匠を凝らして人工的に作り出したモノである。ユーザインタフェースはアーティファクトの顔であり,アーティファクトの性格を決定する。一方,「話せる」という語は,曖昧である。
 力のあるエンジニアなら,標題から「人の気持ちを汲み取って,融通が利いた人工物を作るべし」というメッセージを引出すかもしれない。最近のIT事情に詳しい人なら,音声処理技術の進歩によってユーザと音声会話できるインタフェースをもつ人工物が出現したことを指摘していると思うかもしれない。いずれの解釈も,エージェントテクノロジーに関わりが深い話である。
 エージェントテクノロジーがめざしているエージェントは,代理人ソフトとも呼ばれ,複雑化し,巨大化して人の手に負えなくなったサイバースペースのなかでユーザの代理人として自律的に作業を行う。最近はやりのネットワークオークションでは,入札締切直前に激しいやりとりがあるという。そのような局面はエージェントにとって真価を発揮する格好の場である。エージェントは,緊迫した状況でも一瞬のチャンスを逃さず,ユーザの意図に沿った取引を成立させることだろう。マルチエージェントシステムの研究では,エージェントに集団を作らせて,全体として柔軟で合理的な行動ができるようにする試みも行なわれている。





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