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ニュースリリース

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2021年9月30日

シャープ株式会社

「低反射」や「高防曇性」などの特長に加え、奈良県立医科大学※1と共同で新たな効果を確認

独自の『モスアイ技術』で、10分間に99.675%の
付着新型コロナウイルスを不活化※2する効果を実証

 シャープディスプレイテクノロジー株式会社(本社:三重県亀山市、代表取締役会長:桶谷大亥)は、奈良県立医科大学医学部 微生物感染症学講座の矢野寿一教授、中野竜一准教授の研究グループ、およびMBTコンソーシアム※3の協力のもと、当社独自の『モスアイ技術』が、付着した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の不活化に高い効果を発揮することを実証しました。

 当社では、これまでも『モスアイ技術』による抗菌性に関して研究を行っており、福島県立医科大学医学部の錫谷教授との共同研究※4において抗菌性を確認するなど、産学連携による衛生面での検証を進めてまいりました。

 今回の共同研究では、独自の樹脂材料の表面にモスアイ構造を形成したフィルム上の感染価(感染力をもつウイルス量)が、参照試料として用いたモスアイ加工を施していないフィルム上の感染価に対して、10分間で99.675%、30分間で99.968%減少することを実証しました。

 また、モスアイ構造を形成したフィルムの表面をアルコールで100回清掃した後においても、30分経過時点で、参照試料に対して感染価は99.959%減少することが認められ、高い耐久性が確認されました。

<奈良県立医科大学医学部 微生物感染症学講座 矢野寿一教授のコメント>

独自の樹脂材料でモスアイ構造を表面に形成したフィルムでは、表面に付着した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を不活化し、アルコール清掃後も不活化効果は持続することが判明した。本試験結果より、新型コロナウイルスによる接触感染防⽌に有効である可能性が考えられる。

※1 公立大学法人。理事長・学長:細井裕司、奈良県橿原市、1945年4月創立。

※2 ウイルスの感染性を失わせる作用。

※3 一般財団法人。理事長:細井裕司。医学的知識をすべての産業に投入してイノベーションを起こすMBT(Medicine-Based Town、医学を基礎とするまちづくり)の理念を達成するために設立され、現在ほぼすべての業種から210社以上が参加。

※4 PLoS ONE 12(9): e0185366. を参照。(https://doi.org/10.1371/journal.pone.0185366

当社独自の『モスアイ技術』について

当社は、これまで液晶パネル開発で培った特殊加工(モスアイ技術)をフィルムの表面に施すことで「低反射」や「高防曇性」を発現させる技術を開発してまいりました。「低反射」については、フィルム表面に微細な凹凸処理を施したモスアイ構造により、外光の屈折率を連続的に変化させ表面反射率を大幅に低減します(表面反射率約0.3%/面)。また、「高防曇性」については、独自の樹脂材料の表面にモスアイ構造を形成することにより、フィルム表面に付着した水滴や飛沫の表面積を素早く広げることができるので、温度差・高湿環境下で発生する結露や呼気による曇りを防止します(防曇効果)。

今回、これら「低反射」「高防曇性」の特長に加えて、当社独自の樹脂材料を用いたフィルム上にモスアイ構造を形成する技術『モスアイ技術』が、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の不活化に高い効果を発揮することを実証しました。本結果を受けて、抗ウイルス効果を付加した『モスアイ技術』を「Anti-Virus Nanostructure(アンチウイルス・ナノストラクチャー)」と称します。

当社は、今後も「Anti-Virus Nanostructure」技術をさらに発展させ、社会課題の解決に貢献してまいります。

実証試験の概要

●試験実施機関:公立大学法人 奈良県立医科大学医学部

●試験サンプル:

・モスアイ構造を形成したフィルム(50 × 50mm)

・モスアイ構造を形成した表面をアルコールで100回清掃したフィルム(50 × 50mm)

・参照試料として、モスアイ加工を施していないフィルム(50 × 50mm)

●試験ウイルス:新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)

        (本試験では、フィルム表面に付着した新型コロナウイルスへの効果を検証)

●試験内容(図1):

・試験⽅法として、ISO 21702(プラスチックおよびその他の⾮多孔質表面の抗ウイルス活性の測定)を参考とした方法(福島県立医科大学の錫谷教授と共同研究した滴下法)を採用。

・試験品に新型コロナウイルスを10マイクロリットル接種。ウイルス液をまんべんなく展延。

・安全キャビネット内で、試験サンプル表面の乾燥を確認後、表1の条件にて一定時間静置。

・作⽤時間(1分、10分、30分)後に、試験サンプルに洗出し液を加え、ウイルスを回収。

・回収液をVeroE6細胞に感染。その後、プラーク法でウイルス感染価(PFU/sample)を測定。

図1.試験手順

 

 表1.試験サンプルに対する作用時間

 

試験サンプル

作用時間

0分

1分

10分

30分

モスアイ加工を施していないフィルム

モスアイ構造を形成したフィルム

モスアイ構造を形成した表面を
アルコールで100回清掃したフィルム

〇:各2回測定を実施  

 

●結果:

本試験で使⽤した、モスアイ構造を形成したフィルム、およびモスアイ構造を形成した表面をアルコールで100回清掃したフィルムは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を不活化することが認められ、『モスアイ技術』は、新型コロナウイルスによる接触感染防⽌に有効である可能性を確認しました(図2、図3)。なお、浮遊するウイルスへの効果、⼈体への影響については検証を⾏っていません。

図2.ウイルス感染価の作用時間推移

 

(注)
ニュースリリースに記載されている内容は、報道発表日時点の情報です。ご覧になった時点で、内容が変更になっている可能性がありますので、あらかじめご了承下さい。

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