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ニュースリリース

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2022年8月24日

シャープ株式会社

革新的な電力貯蔵技術の確立と早期実用化をめざす

カーボンニュートラルの実現に向けた
「亜鉛による蓄エネルギー技術」の開発を開始

「亜鉛による蓄エネルギー技術」利用イメージ

 シャープは、カーボンニュートラルの実現に向けて、大規模な電力貯蔵に好適な「フロー型亜鉛空気電池」を用いた蓄エネルギー技術の開発を開始しました。これは、環境省「令和4年度地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」の「ボトムアップ型分野別技術開発・実証」枠での採択を受けたものです。当社が長年培ってきた亜鉛空気二次電池技術をベースに、新たにフロー型方式を採用することで、低コストかつ大容量の蓄エネルギー技術の確立をめざします。

 日本政府のエネルギー基本計画では、2030年度における太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの電力構成比を36~38%程度と見込んでいます。しかし、自然条件によって発電量が変動する再生可能エネルギーを主力電源化するには、蓄電池(二次電池)を活用した電力供給の平準化が必要不可欠です。そのため、革新的な電力貯蔵技術の開発が期待されています。

 今回開発する「フロー型亜鉛空気電池」の技術は、蓄エネルギー物質に亜鉛を用いており、かつ蓄電池の充放電を担うセルと蓄エネルギー物質の貯蔵部が各々独立した構成になっているのが特長です。豊富で安価な資源である亜鉛を利用すること、加えて貯蔵部の大型化による大容量化が容易なことから、低コストで大容量の蓄電池が実現可能です。また、電解液には水系の液体を使用しているため、高い安全性も確保されています。

 当社は、カーボンニュートラルの実現に向け、「2050年における自社活動での温室効果ガス排出量実質ゼロ」を環境ビジョンとして掲げ、2035年までに60%削減※2を目標に取り組んでいます。本技術を、オフィス・工場での自家消費用途や、発電所・マイクログリッドでの分散型電力貯蓄用途などへ展開し、再生可能エネルギーの普及促進とともにカーボンニュートラルの実現に向けて貢献してまいります。

※1 大規模発電所からの電力供給に頼らず、エネルギー供給源と消費施設を一定の地理的範囲でまとめて、地産地消する小規模電力網。

※2 2021年度比。

<「フロー型亜鉛空気電池」について>

基本構成と蓄電の原理

空気中の酸素を活用して充電や放電を行う空気電池の一種であり、電気を蓄える物質(蓄エネルギー物質)に亜鉛(Zn)を利用するものです。一般的な蓄電池の基本構成である充放電を担うセルと、フロー型方式としてセルで充電された亜鉛の貯蔵を担う貯蔵部から構成されます。

 

充電においては、酸化亜鉛(ZnO)が亜鉛に化学変化する際に、電子を蓄えます。一方、放電においては、空気中に含まれる酸素との作用によって、亜鉛が酸化亜鉛に戻る際に、蓄えていた電子を放出するため、電気を取り出すことができます。

 

このような酸化亜鉛と亜鉛の変化サイクルの活用により、繰り返し充電・放電が可能な蓄電池として活用することができます。

 

亜鉛を利用した「フロー型亜鉛空気電池」の概要図

技術的優位性

・安価な亜鉛を蓄エネルギー物質に利用するため、低コスト化が可能

現在、蓄エネルギー物質にリチウムを利用する蓄電池が主流となりつつありますが、リチウムは産出国や精製国が限られることから高価であり、需給が逼迫するリスクもあります。一方、亜鉛は多くの地域で産出・精製されるため、安価な上、供給も安定しています。

 

・フロー型方式のため、大容量化が容易

フロー型方式では、セルと貯蔵部が各々独立していることから、貯蔵部の大型化によって容易に大容量化が可能です。また、原理上、貯蔵部はセルより低コストですので、安価な亜鉛の利用と相まって、低コストかつ大容量の蓄電池とすることが可能です。

 

・水系電解液による高い安全性

亜鉛を浸している電解液に水系の液体を使用しているため、発火の可能性が極めて低く、有機溶剤(非水系)を用いた蓄電池よりも、高い安全性が確保されています。

お問い合わせ

研究開発事業本部 インキュベーションセンター 第一開発室 info_zab@sharp.co.jp

(注)
ニュースリリースに記載されている内容は、報道発表日時点の情報です。ご覧になった時点で、内容が変更になっている可能性がありますので、あらかじめご了承下さい。

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