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ニュースリリース

2022年12月12日

NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)

シャープ株式会社

シャープディスプレイテクノロジー株式会社

国立大学法人東京大学

―低環境負荷、かつ高輝度・高コントラスト・広色域のディスプレイの実現へ―

次世代高効率ディスプレイ向けCdフリー量子ドットで、
RGB画素のパターニングに成功

 NEDOの「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」において、シャープ(株)、シャープディスプレイテクノロジー(株)、東京大学は、次世代高効率ディスプレイの実用化を目指して、2019年度から「次世代高効率ディスプレイの材料およびプロセス開発」に取り組んできました。

 今般、発光スペクトル幅が狭くカドミウム(Cd)を含まない量子ドットによる、電流注入での発光とRGB(赤緑青)画素のパターニングに成功しました。これにより、環境負荷が小さく、高輝度・高コントラストで広い色域を兼ね備えた、新たな自発光型のディスプレイの実現が可能となります。今後は、ヘッドマウントディスプレイをはじめとした中小型の高精細ディスプレイから8K/4K大型ディスプレイまでに適用できる省エネルギーディスプレイの早期実用化に取り組み、2030年の日本における省エネ効果量として11.3万kL(原油換算)を目指します。

 シャープ(株)と東京大学は、本成果の詳細を2022年12月16日に福岡国際会議場で開催される第29回ディスプレイ国際ワークショップ(IDW’22)で発表します。

図1 今回開発した量子ドット発光素子のRGB画素

 

1.概要

 ディスプレイ分野では、高画質化などの要求に応えるため、液晶や有機ELに代わる次世代のディスプレイ技術として、量子ドット※1などの新技術を活用する動きが活発になっています。量子ドットは、発光効率が高く、粒子サイズの調整によって発光する波長を制御できるため色再現性に優れることに加え、発光スペクトル幅※2が狭く色純度が高い特性を持つことから、広色域のディスプレイとして好適な技術です。また、カラーフィルターを用いる必要がないため、電力のロスが抑えられ、省エネルギー化につながります。さらに、電流注入で発光※3させることで、自発光型のディスプレイとなり、高コントラストの映像を表現することができます。このようなメリットがある反面、一般的な量子ドット材料にはカドミウム(Cd)が含まれるため、環境への影響が懸念されています。

 このような背景の下、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「戦略的省エネルギー技術革新プログラム※4」の一環として、シャープ株式会社(シャープ)、シャープディスプレイテクノロジー株式会社(SDTC)、国立大学法人東京大学(東京大学)は、量子ドットによる次世代高効率ディスプレイの将来の実用化を目指し、2019年度から次世代高効率ディスプレイの材料およびプロセス技術の開発に取り組んできました。

 そして今般、スペクトル幅が狭くCdを含まない量子ドットによる、電流注入での発光とRGB画素のパターニング※5に成功しました(図1)。これにより、環境負荷が小さく、高輝度・高コントラストで広い色域を兼ね備えた、新たな自発光型のディスプレイの実現が可能となります。

 本成果の詳細は、シャープと東京大学 荒川泰彦特任教授/名誉教授および立間徹教授らとの共同成果として本年12月16日に第29回ディスプレイ国際ワークショップ「The 29th International Display Workshops(IDW’22)」(会場:福岡国際会議場)で発表します。

 

2.今回の成果

【1】Cdを含まず欧州特定有害物質規制(RoHS)指令※6に対応

 従来の一般的な量子ドット材料はCdを用いた半導体ですが、Cdの使用は、欧州連合(EU)の定めるRoHS指令などで規制されています。本成果では、Cdを含まない量子ドットをRGB全てに適用し、パターニングした画素に対して電流注入で発光させることに成功しました(図1)。

 

【2】スペクトル幅が狭く再現可能色域を拡大

 本成果では、従来に比べてB(青)のスペクトル幅を約60%狭くした量子ドット(図2左)を採用し、再現可能な色域を拡大することが可能となりました(図2右)。これにより、発光した光のロスを招くカラーフィルターが不要となり、低消費電力のディスプレイを実現することができます。

図2 今回採用した青色量子ドットの発光スペクトル(左)と色域(右)

 

【3】フォトリソグラフィ※8を採用し大面積ディスプレイに対応

 本成果では、RGB画素のパターニングにフォトリソグラフィ方式を採用しました。フォトリソグラフィ方式は、集積回路などの製造に一般に用いられる方法であり、高精細化が可能かつディスプレイの大面積化に対応可能なことから、今後モバイル端末などの小型デバイスから、8K/4K大型テレビなどの大型ディスプレイまで、さまざまな用途や機器への展開が可能です。

 

3.今後の予定

 本成果に基づき、東京大学では、量子ドットの高品質化に向けた基礎研究をさらに推進し、シャープおよびSDTCでは、低消費電力と高輝度・高コントラスト、広い色域を兼ね備え、ヘッドマウントディスプレイをはじめとした中小型の高精細ディスプレイから8K/4K大型ディスプレイにまで対応する省エネルギーディスプレイの早期実用化に取り組みます。省エネルギーディスプレイの普及による消費電力の低減を通じ、2030年の日本における省エネ効果量として11.3万kL(原油換算)を目指します。

【注釈】

※1 量子ドット
直径10ナノメートル(10-9メートル)程度以下の半導体粒子です。

※2 発光スペクトル幅
画素から発せられる光の波長の幅のことです。

※3 電流注入で発光
半導体粒子である量子ドットに、電子と正孔を注入し再結合発光させる方式で、エレクトロルミネッセンスと呼ばれるものです。

※4 戦略的省エネルギー技術革新プログラム
事業概要:https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100039.html
2022年度予算:71.6億円(次プログラム「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」採択分を含む。)
事業期間:2012年度~2024年度

※5 パターニング
ガラスやフィルムなどの基板の上に、画素を形成・配列することです。

※6 欧州特定有害物質規制(RoHS)指令
欧州連合(EU)から発せられた電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する指令(Restriction of Hazardous Substancesの略)です。

※7 BT.2020(図2中)
映像信号を規定する勧告(ITU-R BT.2020)で、色空間を含む超高精細テレビに求められる基準を標準化したものです。

※8 フォトリソグラフィ
感光性の物質を塗布した後、光を照射することで、表面に露光箇所と非露光箇所からなるパターンを生成する技術です。

(注)
ニュースリリースに記載されている内容は、報道発表日時点の情報です。ご覧になった時点で、内容が変更になっている可能性がありますので、あらかじめご了承下さい。

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