Technical Journal

巻頭言
研究開発について思うこと

 「工学の工の字の示すところは,上の横棒が天の理(すなわち,自然科学の理論・法則)を指し,下の横棒が地の理(すなわち,人間社会のあるべき姿)を指している。その間を結ぶ(縦棒)のが工学(Technology)である。」40年ほど前に講義で心に刻まれた言葉です。技術の研究開発に携わる者は自然科学の法則の発見やそれを活用した発明だけで満足していてはいけない。それが人間社会をより良くしてゆくことに結びつけられなければ,技術者としては役目を果たしことにならないという教えです。我々の生活を豊かにし,役立つことを目指して,その目標に適う天の理の新しい発見を探し,それを合理的に活用する術を開発しなければ技術研究者の役目を果たしたことになりません。我々の生活の将来像を描くことは技術者にとっても極めて重要な日常的活動です。
ここで大切なことは,技術者仲間だけの独善的思考に陥らないことです。技術者の拘りが画期的なものを生み出した美談が世に流布されることがよくありますが,成功したものは,個人的に(すなわち,陰に)しろ,組織的に(すなわち,陽に)しろ,技術とニーズ(またはウオンツ)の相互作用の産物であり,どちらか一方が決まっていてそれに他方を合わせこむだけの話ではないのです。したがって,技術開発から天の理の発見に繋がることもよくあるわけです。

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