サステナビリティ・マネジメント
シャープのサステナビリティ方針
サステナビリティに対する基本的な考え方
シャープは、経営理念において掲げている「広く世界の文化と福祉の向上に貢献する」「会社に働く人々の能力開発と生活福祉の向上に努め、会社の発展と一人一人の幸せとの一致を図る」「全ての協力者との相互繁栄を期す」という創業以来の精神のもと、社会やステークホルダーからの期待や要請に応え、当社と社会の相互の持続的発展を目指すことをサステナビリティに対する基本的な考え方としています。
サステナビリティ方針の体系

企業行動憲章・行動規範
経営理念・経営信条を具体化するために、グループ企業の行動原則として「シャープグループ企業行動憲章」を、全ての役員・従業員の行動の規準として「シャープ行動規範」を定め、シャープグループにおける基本方針として徹底し、あらゆる業務遂行において、法令遵守はもとより高い倫理観をもって適切かつ真摯な行動に努めています。
シャープグループ企業行動憲章・シャープ行動規範は、シャープ(株)の他、主要な国内外の子会社および関係会社の取締役会の決議の基、これらを適用しています。また、適用している海外拠点においては各国語に翻訳し、徹底・浸透を図っています。
シャープグループ企業行動憲章・シャープ行動規範は、その内容の改定要否を毎年検討しています。
RBAへの参加
シャープは、国際的な基準に沿ってグローバルサプライチェーンにおける社会的責任をより一層果たしていくため、2021年12月にRBA(Responsible Business Alliance)に加盟しました。
RBAのビジョンとミッションを全社で共有するとともに、RBAが策定する「RBA行動規範」を当社グループにおける具体的な取り組み指針として、自社工場およびサプライヤー工場におけるリスクの特定と改善を進めています。
行動規範浸透の取り組み
シャープ行動規範への理解を一層深め、全役員・従業員一人ひとりが行動規範に則った正しい行動をしていくことを目的として、日本国内においてはeラーニング形式にて「シャープ行動規範に基づくコンプライアンス学習」を毎年実施しています。
2024年度は、行動規範に則った業務遂行、内部通報制度の周知、ビジネスと人権、コンプライアンス、情報セキュリティ、顧客満足と製品安全など幅広いテーマで実施し、シャープ(株)、国内の子会社等、労働組合など17,938人を対象に実施し、17,352人が受講(受講率:96.7%)しました。また、海外の各拠点においても行動規範の周知を図っており、その一助としてeラーニングの学習コンテンツを配付して、グローバルに徹底しています。
今後もコンテンツを拡充しながら継続して実施し、従業員の理解の浸透と、問題発生を未然に防ぐマインドの醸成を図っていきます。なお、これらの取り組みは「内部統制に関する基本方針」に基づく社内施策として実施し、代表取締役 社長執行役員 CEOが委員長を務める内部統制委員会および取締役会に報告しています。
従業員へのサステナビリティ教育
シャープでは、従業員一人ひとりがサステナビリティを自分事として捉え、日々の業務に落とし込んでいくことを目的として、国内グループ会社の全従業員を対象とするeラーニング「ESGに関する学習」を毎年実施しています。
2024年度は、シャープグループのサステナビリティ基本戦略などの基礎的なテーマに加えて、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、生物多様性、DE&I/LGBTQ+などのテーマに、シャープ(株)、国内の子会社等、労働組合など17,861人を対象に実施し、13,370人が受講(受講率:74.9%)を完了しました。
受講後には理解度テスト、アンケートの実施により研修効果の測定を行っており、アンケートでは、日々の業務においてESGを「常に意識して取り組んでいる」「時々意識して取り組んでいる」と回答した従業員の割合が70.6%となりました。
今後もサステナビティ教育の機会とテーマを拡充しながら継続して実施し、サステナビリティの社内浸透を図っていきます。
サステナビリティ戦略と推進体制
シャープは、サステナビリティに対する基本的な考え方に基づき、2015年9月に国連で採択され、企業へも大きな期待が寄せられている持続可能な開発目標(SDGs)の達成へ貢献することを中長期ビジョンに据え、取り組みを進めています。
2018年度には、この中長期ビジョンの実現に向けて「事業や技術のイノベーションを通じた社会課題の解決」と「サステナブルな事業活動による社会・環境に対する負荷軽減」を両輪として、SDGs達成に向けた貢献を目指すことをサステナブル経営の基本戦略と取り組みを加速しています。
こうした取り組みを通じ、脱炭素社会の実現や医療・介護問題の解決、労働力不足の解消、多様なライフスタイルの実現など、現代社会が直面する様々な社会課題の解決に向けて、創業の精神である「経営理念・経営信条」にこだわりながら、シャープらしい価値創造に取り組んでいきます。
シャープは、これらの戦略を実行施策レベルに落とし込み、PDCAサイクルでマネジメントしていくため、代表取締役 社長執行役員 CEOを委員長とし、経営幹部、環境・人事・調達などの本社機能部門、事業本部・子会社などで構成する「サステナビリティ委員会」を設置し、ビジョンや方針の徹底、各種施策についての審議・推進、社会課題に関する最新動向の情報共有などを実施しています。また、重要な方針や決定事項については、取締役会に報告しています。さらに、2024年度からはサステナビリティの主要なテーマに関する「サステナビリティ分科会」を設置し、取り組みを加速しています。
今後も、SDGs・ESG分野の取り組みを継続して強化し、当社のESGレーティング・格付の向上を図りながら、持続的成長を支える強固な経営基盤を構築し、サステナブルな社会の実現に貢献していきます。
サステナブル経営の基本戦略

サステナビリティマネジメント推進体制(2025年8月現在)

イニシアティブへの参加
シャープは、グローバル社会の一員として、国際的な指針や規範を尊重しながら企業経営を行っています。
国連グローバル・コンパクト
2009年9月に「国連グローバル・コンパクト」に署名参加しました。国連グローバル・コンパクトの「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4分野10原則を踏まえて各種施策を展開しています。

RBA(Responsible Business Alliance)
2021年12月にグローバルサプライチェーンにおいて社会的責任を推進するRBAに加盟し、RBAのビジョンとミッションの支持を表明しています。
RMI(Responsible Minerals Initiatives)
2021年12月に責任ある鉱物調達の国際的なイニシアティブであるRMIに加盟し、鉱物調達におけるデュー・ディリジェンス活動を積極的に行っています。

一般社団法人 ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)
2022年10月に「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠して苦情処置プラットフォームを提供するJaCERに加盟し、グローバルサプライチェーンにおける苦情処理メカニズムの整備を進めています。

その他の主なイニシアティブ
- 一般社団法人 日本経済団体連合会
- 一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)
- 一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)
- 一般社団法人 ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)
- 日本機械輸出組合(JMC)
- 一般社団法人 太陽光発電協会(JPEA)
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)
2022年8月にTCFDの提言への賛同を表明するとともに、TCFDのフレームワークに沿って、気候変動に関する情報開示の拡充を図っています。

RE100
2025年2月に再生可能エネルギー100%使用を目指す国際的なイニシアティブである「RE100」に加盟しました。再生可能エネルギーの導入をより積極的に進め、脱炭素社会の実現への貢献を目指します。

SBTi(Science Based Targets イニシアティブ)
2024年3月にパリ協定に準拠した科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標の「SBT 1.5℃」認定を受けています。

GXリーグ
2023年4月に経済産業省が推進する「GXリーグ」に参画しました。産・官・学の連携により、温室効果ガスの排出削減に貢献しつつ、外部から正しく評価され成長できる社会(経済と環境および社会の好循環)を目指します。

サーキュラーエコノミーに関する産官学のパートナーシップ
2023年12月に経済産業省が推進する「サーキュラーエコノミーに関する産官学のパートナーシップ(サーキュラーパートナーズ)」に参画しました。産官学の連携を深め、サーキュラーエコノミーの実現を目指します。

TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フォーラム
2024年8月にTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の理念に賛同し、その活動を支援するTNFDフォーラムに参画しました。本フォーラムへの参画を通じて得られる知見を生かし、自然関連の情報開示の準備を進めます。

生物多様性のための30by30アライアンス
2024年6月に環境省が推進する「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加しました。事業活動や環境社会貢献活動を通じて、生物多様性の保全、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを拡充し、30by30目標の達成に貢献を目指しています。

マテリアリティ(重要課題)
マテリアリティの特定とモニタリング
SDGsやパリ協定※1などのグローバルでの社会課題解決を目指した国際的な中長期目標が相次いで発表され、またグローバルサプライチェーンにおける強制労働などの人権問題への関心が集まる中で、企業のサステナビリティ取り組みへの期待はより一層高まっています。
こうした背景から、グローバルな社会課題解決への貢献とシャープグループの中長期的な成長との両立の視点から、サステナブル経営推進のためのマテリアリティ(重要課題)を特定し、取り組みを進めています。
マテリアリティの特定に当たっては、当社の経営理念・経営信条や中期経営方針に加えて、国連グローバル・コンパクト、SDGs、RBAのビジョン・ミッションなどの国際的なガイドラインや原則、GRI※2、SASB※3、ISSB※4やESRS※5などの国際的な非財務情報開示基準、さまざまなステークホルダーからの意見や期待、ESGレーティング・格付機関などによる評価結果などを踏まえ、マテリアリティを抽出しています。
抽出したマテリアリティは「環境・社会への影響の大きさ」と「企業財務への影響の大きさ」という2つの視点から、全社レベルで優先的に取り組むテーマを特定しています。
特定された優先取り組みテーマについては、施策ごとの目標・GOAL、評価指標(KPI)、実行計画などを設定し、半年に一度開催される「サステナビリティ委員会」や「サステナビリティ分科会」、その他全社会議等において実績や取り組み状況のレビューを行っています。
- 2015年にパリで開催された第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で採択された、気候変動抑制に関する多国間の国際的な合意協定。世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求することが掲げられている。
- Global Reporting Initiative(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)
- Sustainability Accounting Standards Board(サステナビリティ会計基準審議会)
- International Sustainability Standards Board(国際サステナビリティ基準審査会)
- European Sustainability Reporting Standards(欧州サステナビリティ報告基準)
マテリアリティの特定プロセス

重要課題(優先的に取り組むテーマ) | 重点取り組み | KPI | 達成期限 |
---|---|---|---|
気候変動への対応 | 事業活動に伴う温室効果ガス排出の削減 | 自社活動のCO2ネットゼロ | 2030年度 |
温室効果ガス排出量:44.4%削減(基準年:2021年度) | 2025年度 | ||
資源の再利用と循環経済の取り組み | 製品のサーキュラーエコノミー推進 (ヴァージンプラスチック使用量削減) |
当該年度の新製品における「再生プラスチックまたはバイオプラスチック使用製品」の機種数割合:70%以上 | 2030年度 |
|
2025年度 | ||
汚染物質管理 | 事業活動に伴う廃棄物排出の削減 | 最終処分率:0.5%未満 | 2025年度 |
揮発性有機化合物(VOC)の排出量削減 | VOCの大気への排出量:204t以下(基準年:2010年度) | 2025年度 | |
水環境・資源の管理 | 受水量原単位の改善 | 受水量原単位改善率:10%(基準年:2021年度) | 2025年度 |
人材(人材育成、DEI、安全衛生、人権など) | AI/デジタル人材の拡充 | AIデジタル技術者数:3,200人 | 2027年度 |
|
2025年度 | ||
女性活躍推進法に基づく行動計画の推進 | 新卒採用の女性比率:技術系15%、文系50%以上 | 2029年度 | |
管理職の女性比率:7.5%以上 | 2029年度 | ||
女性社員の育児休職復職者の12か月後在籍者率:95%以上 | 2029年度 | ||
障がい者雇用率の向上 | 障がい者雇用率:2.5%台 | 2025年度 | |
重大災害の発生ゼロ/労働災害事故の低減 | 労働災害:2024年度比10%削減(52件以下) 休業災害:2025年度労災抑制目標の25%以下(13件以下) |
2025年度 | |
全社健康取り組み「けんこうシャープ」の推進 | 2025年度 | ||
過重労働に伴う健康障害の防止 | 2025年度 | ||
従業員エンゲージメントの向上 | エンゲージメントスコア:A(2024年度比3ランクアップ) | 2027年度 | |
人権デュー・ディリジェンスの推進 | 自社工場ESG自己評価調査スコア:全拠点前年スコア以上 | 2025年度 | |
製品・サービスの品質と消費者保護 | 世界のお客様に良いと認識していただける品質に向けて、信頼性確保の取り組みに加え、修理サービス品質向上を進め、NPSを含めたブランド価値を高める取り組みの強化 | 2025年度 | |
応対満足度向上 | 応対満足率:90%以上 | 2025年度 | |
サプライチェーンマネジメント | 「CSR・グリーン調達調査」継続実施 | 回収率:100% | 2025年度 |
調達業務従事者へのESG学習の実施 | 学習受講率:100% | 2025年度 | |
責任ある鉱物調達の推進 | CMRT調査における適合製錬業者率(コンフォーマント率):85%以上 | 2025年度 |
- 耐衝撃性ポリスチレン、汎用ポリスチレン(GPPS)もゴム成分を加えて耐衝撃性を付与した樹脂。
国際基準に沿ったESGリスク評価
シャープは、グローバルなビジネス展開に当たって、事業の拡大と持続可能な社会の構築を両立していくためには、国際基準に則して取り組むことが極めて重要と認識しています。
2015年度から、国際的な業界基準の1つである「RBA行動規範」をシャープグループの取り組み指針として活用し、国内外の全ての生産工場を対象とした自己評価調査を継続的に実施しています。
この調査は、RBAの自己評価調査票に基づき自社工場の取り組み状況を確認・評価するもので、調査への回答対応を通じて現地担当者の国際基準への理解促進を図っています。
2024年度は、国内外の全26工場を対象に調査を実施しました。調査後はRBAの評価基準に沿って「Low Risk」「Moderate Risk」「High Risk」の3段階で評価し、各工場に総合評価および分野別評価をフィードバックしています。
調査の結果、グループ全体として直ちに大きなリスクにつながる問題は確認されませんでしたが、各工場からの回答内容は、本社機能部門がレビューを行い、取り組みが不十分な点や潜在的なリスクが残る点については、個別ヒアリングを実施するなど、各工場への指導を通じて継続的な改善活動を促しています。
加えて、2023年度からはリスク評価の実効性の向上と客観性と透明性の観点から、主要な生産工場についてはRBAのVAP※監査を受審しています。2024年度は中国、タイ、フィリピン、インドネシアの計6工場でVAP監査を受審し、監査において発見された指摘事項への是正措置を実施しています。
今後も継続して調査・監査を実施するとともに、RBAのリスク評価の仕組みやツールを活用し、取り組みのレベルアップを図っていきます。
- Validated Assessment Program。RBAが認定する第三者監査会社による現地監査。
ESGリスク評価の実施状況
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
---|---|---|---|
ESGリスク評価対象工場 (国内外全生産工場) |
27工場 | 27工場 | 26工場 |
自己評価調査実施工場 | 27工場 (回答率100%) |
27工場 (回答率100%) |
26工場 (回答率100%) |
RBA VAP監査受審工場 | - | 4工場 | 6工場 |
2024年度自己評価調査 総合評価の構成比

2024年度自己評価調査 分野別評価の分布状況

ステークホルダーエンゲージメント
ステークホルダーエンゲージメントの推進
当社の経営理念の中で掲げている「株主、取引先をはじめ、全ての協力者との相互繁栄を期す」を実現するために、お客様、お取引先様、地域コミュニティの皆様など多様なステークホルダーに対して情報開示を適切に行っています。
また、昨今のESG投資の高まりを受け、さまざまな機会を通じて、株主・投資家とのコミュニケーションを図り、ESGの取り組みを更に改善しています。
今後も、ステークホルダーの皆様の意見を企業活動に反映して、社会課題の解決への貢献と当社の持続的な成長を目指していきます。
