生物多様性保全

事業活動と社会貢献活動を通じた生物多様性保全

シャープは事業活動のさまざまな場面で生物多様性に影響を与え、また生態系による恵みを受けていることから、事業活動と社会貢献活動を融合したハイブリッド型アプローチで生物多様性保全に貢献する取り組みをグローバルに展開しています。

生物多様性保全の取り組み領域

事業活動と社会貢献活動のハイブリッド型アプローチ

事業活動においては、2030年までに自然の減少を食い止め、回復・向上へと転じる「ネイチャーポジティブ」の実現を目指しています。その取り組みの一環として、2024年度より自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)フォーラムへ参画するとともに、2025年度には当該フレームワークに沿った情報開示を宣言する「TNFD Adopters」に登録し、TNFDフレームワークに基づく情報開示の準備を進めてきました。2025年度は、TNFDが推奨する開示のための評価ステップ「LEAPアプローチ」を当社事業所を対象に実施しました。

TNFDに基づく情報開示

TNFD提言への対応

自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は、事業活動に伴う自然資本および生物多様性への依存・インパクトを体系的に評価し、情報開示することを推奨するフレームワークを公表しています。シャープはTNFDの趣旨に賛同し、2030年までに自然減少を食い止め、プラスへと転じさせるネイチャーポジティブの実現を目指して、2024年度よりTNFDフォーラムへ参画し、2025年度には当該フレームワークに沿った開示を宣言する「TNFD Adopters」に登録しました。今後、TNFDフレームワークに沿った情報開示の更なる拡充を図っていきます。

事業活動と社会貢献活動のハイブリッド型アプローチ

1. ガバナンス

自然関連の問題は、気候関連の問題と同様に「サステナビリティ委員会」の委員長である代表取締役 社長執行役員CEOが監視、監督責任を持ち、自然関連の各種施策の審議・推進や最新動向の共有を実施しています。委員会における経営層によるモニタリング・レビューを通じて、生物多様性に関する取り組みを継続して強化し、持続可能な社会の実現への貢献を目指しています。

2. 戦略

当社は、国内外の生産拠点(直接操業)を対象に、TNFDが推奨する開示のための評価ステップ「LEAPアプローチ」に基づく分析を実施しました。今後は、LEAPアプローチの対象範囲をサプライチェーンへと拡大し、ネイチャーポジティブの実現に向けた具体的なアクションを検討していきます。

3. リスク管理

リスク管理の基本的な考え方を定めた「ビジネスリスクマネジメント規程」に基づき、自然関連リスクの特定や評価を行っています。発生する確率が高い自然関連リスクの抽出を行い、経営幹部およびリスクマネジメント事務局である内部統制部へ必要に応じて事案内容を報告し、関係部門と連携して必要な改善策を検討しています。特に直接操業地における水不足等のリスクによる事業継続への影響を最小化するため、世界資源研究所(WRI)が開発した評価ツール「Aqueduct」を用いて工場の水リスクを継続して評価しています。リスクが最も高い地域にある生産拠点での排水のリサイクルによって受水量の削減等の取り組みを行っています。

4. 指標と目標

シャープは、長期環境ビジョン「SHARP Eco Vision 2050」において、「気候変動」「資源循環」「安全・安心」 の3つの分野で2050年の長期目標を設定し、持続可能な地球環境の実現を目指しています。「安全・安心」の分野では、「シャープの企業活動が、人の健康や地球環境・生態系に悪影響を及ぼすことがあってはならない」という考えのもと、「化学物質の適正管理で人の健康や地球環境・生態系を守る」ことを目標として設定し、その達成に向けた取り組みを推進しています。

今後は、事業活動と社会貢献活動を融合したハイブリッド型アプローチで生物多様性保全に貢献する取り組みを継続するとともに、 LEAPアプローチに基づき、具体的な目標設定の検討を進めていきます。

LEAPアプローチ

スコーピング

事業規模、自然関連への事業の依存度、事業が自然に与える影響度の観点から、当社主要事業であるスマートライフ、スマートワークプレイス、ディスプレイデバイス事業を担う国内外の生産拠点(直接操業)について、分析対象範囲を検討しました。その結果、国内3拠点および海外3拠点を分析対象として設定しました。

優先地域の特定(Locate)

スコーピングで選定した拠点を対象に、 TNFDが推奨する分析ツール※を活用して自然との接点がある地域を明らかにしました。優先地域の特定にあたっては、分析ツールの指標を踏まえつつ、事業規模、環境負荷(GHG排出量・廃棄物発生量・取水量・排水量等)、水リスク、生物多様性(生物多様性の重要性、絶滅危惧種等の有無)の4つの判断基準を用いています。

これらの基準を組み合わせて総合的に分析した結果、国内3拠点すべてと、海外3拠点のうち東南アジアの2拠点を優先地域として特定しました。

  • ENCORE、IBAT、Aqueduct。

依存・インパクトの特定(Evaluate)

次に、特定した優先地域において各事業が自然とどのように関わっているかを分析し、ヒートマップに整理しました。分析にあたっては、各拠点の事業内容を国際標準産業分類(ISIC)に基づいて分類し、自然への依存度および影響度を「Very High」「High」「Medium」「Low」「Very Low」の5段階で評価しています。また、一部の評価結果については、当社の実態に即した補正を加えています。

自然への依存に関するヒートマップ

VH:Very High H:High M:Medium L:Low VL:Very Low

セグメント 所有事業 自然への依存
供給
サービス
調整サービス
水資源 固形廃棄物の浄化 大気浄化 水質浄化 騒音減衰 感覚的影響の緩和 水流調整 地域的な気候調整 世界的な気候調整 降雨パターン調整 洪水緩和 暴風雨
緩和
生息地の維持
スマート
ライフ
白物家電
事業
M VL VL M VL VL M L VL VL M M L
テレビ
事業
M VL VL M VL VL M L VL VL M M L
ディスプレイ
デバイス
デバイス
事業
H VL L M VL VL M L VL VL M M H

自然へのインパクトに関するヒートマップ

VH:Very High H:High M:Medium L:Low VL:Very Low

セグメント 所有事業 自然へのインパクト
土地・淡水域・海洋利用変化 気候変動 資源利用/回復 汚染/汚染除去
陸域生態系の
利用
GHG排出 水利用 廃棄物 GHG以外の
大気汚染
土壌汚染 水質汚染 かく乱
スマート
ライフ
白物家電事業 L M M M L M L M
テレビ事業 L M M M L L L M
ディスプレイ
デバイス
デバイス事業 L H H H H H H M

当社は、水資源の供給や水質浄化、水流調整といった水関連のサービス、洪水や暴風雨の緩和に代表される災害緩和サービス、希少種等が生息するための生息地の維持サービスに依存していることが明らかになりました。また、GHG排出、水利用、廃棄物、かく乱によるインパクトに加えて、デバイス事業では大気・土壌・水質汚染といった汚染に関するインパクトが特定されました。

リスク・機会の特定(Assess)

ENCORE分析で特定された依存・影響に関して、当社事業の特性を踏まえて、右図のとおりリスクと機会を抽出し、対応策を検討しました。今後は、シナリオ分析を実施するとともに、これらのリスクと機会の優先順位付け・重要性評価を行っていきます。

当社の事業におけるリスク・機会と対応策

カテゴリー 抽出したリスク 特定した依存 特定した影響 対応策
物理 リスク 慢性 水資源供給の減少および枯渇による操業停止   水利用
  • 受水量の削減と排水リサイクルの推進
慢性 適切に管理されていない有害化学物質や廃棄物による水質汚染、土壌汚染 水質浄化・水流調整 廃棄物・土壌汚染・水質汚染
  • 廃棄物、有害化学物質の排出抑制
  • 排水の適正処理
  • プラスチック使用量の削減
  • 環境負荷の低い原材料の選択
急性 自然の気候調整力低下/自然の保水力の低下による風水害の激甚化、土砂災害や浸水被害の増加 洪水緩和・暴風雨緩和・生息地の維持 GHG排出
  • 省エネ
  • 再エネ利用拡大によるGHG排出削減
移行 リスク 技術 水効率やエネルギー効率を高めるための設備や機械の導入コスト 水資源 GHG排出・水利用・廃棄物・GHG以外の大気汚染・土壌汚染・水質汚染・かく乱
  • <GHG排出>
    • 省エネ・再エネ利用拡大によるGHG排出削減
  • <水資源>
    • 受水量の削減と排水リサイクルの推進
  • <汚染、その他>
    • 廃棄物、有害化学物質の排出抑制
    • 排水の適正処理
    • 循環型資源の利用、素材・部品の再利用
    • プラスチック使用量の削減
    • 環境負荷の低い原材料の選択
政策 水源保全・取水・汚染に関する規制・条例の強化  
評判 汚染や操業時のかく乱(光害や騒音等)による評判・訴訟リスク・不買運動 水質浄化・水流調整 GHG排出・廃棄物・GHG以外の大気汚染・土壌汚染・水質汚染・かく乱
  • <GHG排出>
    • 省エネ
    • 再エネ利用拡大によるGHG排出削減
    • <汚染、その他>
      • 廃棄物、有害化学物質の排出抑制
      • 排水の適正処理
      • 循環型資源の利用、素材・部品の再利用
      • プラスチック使用量の削減
      • 環境負荷の低い原材料の選択
カテゴリー 抽出した機会 特定した依存 特定した影響 対応策
ビジネス
パフォーマンス
資源効率 天然資源の利用の削減による事業効率の向上、コスト削減 水資源 水利用
  • 循環型資源の利用、素材・部品の再利用
評判 ブランドイメージの向上   水利用
  • 環境汚染や事故のリスクの最小化
サステナビリティ
パフォーマンス
持続可能な資源利用 水使用量の削減、水源の保全、地下水涵養による持続可能な水利用 水資源 水利用
  • 水資源の過度な利用の抑制

対応策・目標の設定(Prepare)

シャープでは、リスク管理の基本的な考え方を定めた「ビジネスリスクマネジメント規程」に沿って環境関連リスクの特定および評価を行っています。さらに、長期環境ビジョン「SHARP Eco Vision 2050」を指針として、GHG排出、水資源、廃棄物、化学物質等に関する目標を設定し、その達成に向けた取り組みを加速しています。

今後は、LEAPアプローチの対象範囲をさらに拡大し、より詳細な分析・評価を進めるとともに、同アプローチで特定されたリスクや機会に対する目標設定について検討していきます。

生物多様性保全への取り組み

2025年度の目標 2025年度の実績 自己評価 2026年度の重点取り組み目標
  • 国内外の環境保全活動を活性化させ、世界的な30by30達成を目指す
  • 自然共生サイトの認定取得:2件(亀山/天理)
★★
  • 自然共生サイトの新たな認定取得:2件
自己評価:
★★★ 目標を上回る成果があった
★★ 目標を達成
★ 一定の成果があった

シャープは、生物多様性の保全を重要な環境課題の一つと捉え、事業活動と自然との調和を図りながら、世界各地で地域の生態系に配慮した活動を推進しています。

国内では「生物多様性のための30by30アライアンス※1」への参画を契機に、事業所における自然共生サイト※2認定取得などの取り組みを進めています。また、海外では、地域固有の生物の保護や植樹、海洋環境の保全など、各地域の特性に応じた生物多様性保全活動を展開しています。

自然共生サイト認定事業所

事業所名 サイト名 活動場所 生態タイプ 認定時期
天理事業所 東大寺山古墳 天理古墳シャープの森 事業所内 天然林、二次草原/草地 2025年9月
亀山事業所 SGC亀山ビオトープ※3 事業所内 河川・湖沼 2026年3月
  • 2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全する「30by30目標」の達成に向け、企業・自治体・団体などが参加する有志連合。
  • 民間の取り組み等により生物多様性の保全が図られている区域を、地域生物多様性増進法に基づき国が認定する制度。
  • 地域の生物が生息・生育できる環境を保全・創出した空間。
取り組み事例

地域固有のミツバチ保護を通じた地域生態系への貢献

フランスの生産拠点SMFは、地域固有の在来種であるヨーロッパクロミツバチ(Abeille noire)の保護を目的に、敷地内の草地を養蜂家に提供しています。

フランスでは、地域固有の生物資源を保全する観点から、その土地に適した在来種のミツバチを守る取り組みが各地で行われています。こうしたミツバチの保護は、さまざまな植物や農作物の受粉を支えることで、生態系の健全性の維持や農業の持続可能性の向上に貢献します。

SMFは、事業所の敷地を地域の生物多様性保全に活用することで、在来種の保護と地域社会との連携を進めています。

2025年には、こうした活動の副次的な成果として、約90kgのハチミツが採取され、地域で販売されました。

巣箱を開けるための燻煙器の準備をしている写真
巣箱を開けるための燻煙器の準備
巣箱の状態確認の様子の写真
巣箱の状態確認の様子
取り組み事例

「環境省 自然共生サイト」認定を取得

天理事業所(奈良県):天理古墳シャープの森

事業所の敷地内にある天理古墳シャープの森では、地域に本来存在する自然環境を守り、育てることを目標に、生物多様性の保全活動に取り組んでいます。

2006年に実施した生物調査で、この地域に自生する希少植物「ササユリ」が確認されたことをきっかけに、継続的な保全活動を開始し、草刈りの時期や方法の工夫、外来種の除去など、ササユリが育ちやすい環境づくりを進めてきました。その結果、現在もササユリの生育が継続的に確認されており、希少種が長期的に維持されている点が高く評価され、2025年9月に環境省および独立行政法人環境再生保全機構(ERCA)より「自然共生サイト」に認定されました。

天理古墳シャープの森の全景の画像
天理古墳シャープの森の全景
ササユリ自生地・育成地の整備の画像
ササユリ自生地・育成地の整備
開花したササユリの画像
開花したササユリ

亀山事業所(三重県):SGC亀山ビオトープ

事業所内にあるSGC亀山ビオトープは、自然にふれる空間づくりを目指し2010年度から整備を進めており、従業員の憩いの場としての機能に加え、希少種の保護にも取り組んでいます。

このビオトープでは、整備当初から鈴鹿水系由来の希少種で絶滅危惧種に指定されている「ヤリタナゴ」が飼育されており、現在も生息が継続的に確認されるなど、希少種の生息環境が長期にわたり維持されている点が評価され、2026年3月に「自然共生サイト」に認定されました。

亀山ビオトープの看板の画像
亀山ビオトープの看板
生育状況の調査様子の画像
生育状況の調査
生息しているヤリタナゴの画像
生息しているヤリタナゴ
「30by30」ロゴマーク
取り組み事例

サンゴの移植や街路樹の苗木の育成を実施

インドネシアの生産販売拠点SEIDでは、従業員の環境への意識向上を図るとともに、地域の生態系保全に貢献するさまざまな活動を推進しています。

トゥンダ島で実施された「#SharpUntukBumi」では、国連環境計画(UNEP)が主導する世界環境デー(毎年6月5日)に合わせ、インドネシア・サンゴ礁財団(Terangi)の協力のもと、国内外のメディア関係者や地域の方々とともに、5,500本のマングローブの苗木の植樹をしたほか、サンゴの移植やビーチ清掃を行いました。これらの活動を通じて、沿岸域の生態系保全と海洋環境の改善に取り組んでいます。

また、インドネシア政府が制定した「全国自然保護の日(毎年8月10日)」には、従業員40名が参加し、現地で街路樹として親しまれているタベブヤの苗木(ピンク・白)計40本を植えました。苗木は今後、一定の大きさまで会社の敷地内で育成する予定です。

こうした活動を通じて、従業員一人ひとりが地域の自然環境や生物多様性への理解を深める機会としています。 

トゥンダ島でのサンゴの移植の画像
トゥンダ島でのサンゴの移植
トゥンダ島の清掃の画像
トゥンダ島の清掃
タベブヤの苗木の植え替えの画像
タベブヤの苗木の植え替え