安全・安心

化学物質管理に対する考え方

シャープの製品は複数の部品や材料で構成され、さまざまな化学物質を含んでいます。また、工場での生産工程においても、さまざまな化学物質を使用しています。

化学物質は、製品の性能や品質向上に有益である一方、環境や人体への悪影響が懸念されるものもあります。現在も世界各国で、特定の化学物質の使用禁止や制限、ラベルの表示、製品への含有情報管理、大気・水域への排出量の報告、取扱作業環境の管理、作業者の健康管理などを要求する規制が存在します。

シャープは環境基本理念「誠意と創意をもって『人と地球にやさしい企業に徹する』」を掲げており、「シャープ行動規範」では、環境法令や地域協定の遵守を大前提として、化学物質の管理について以下のとおり定めています。

  • 環境破壊や健康に悪影響を及ぼす恐れのある有害物質に関する情報収集に努め、商品・サービスにおいて、これらの有害物質を原則として使用しません。
  • 製造や研究などに使用する化学物質については、法規制またはそれ以上の基準をもって消費を抑えるとともに、適正な使用と管理を行います。

長期環境ビジョン「SHARP Eco Vision 2050」においても「安全・安心」分野の長期目標として「化学物質の適正管理で人の健康や地球環境・生態系を守る」と定めています。

化学物質管理に関する具体的な取り組みとして、製品関連では、製品の構成部品・材料に含まれる化学物質に関して、お取引先様のご協力のもと、サプライチェーン全体の化学物質の情報を管理しています。また、工場の設備部門・生産部門では新規化学物質の使用時や設備の増設・改造時に、安全性や環境負荷などの事前評価・確認を行う「プロセスアセスメント制度」を導入しています。

製品のサプライチェーンでの化学物質の管理体制

お取引先様、シャープ、お客様・各国当局のやりとり

製造における化学物質の管理体制

製造における化学物質の管理体制の図

製品に含有される化学物質の管理

管理対象物質の決定管理対象物質

シャープは、製品の環境負荷の低減と世界各国の化学物質規制への対応のため、製品に含有される化学物質について、世界各国の既存の法規制や業界の自主基準に加え、将来的に規制が要求される可能性などを考慮した上で、独自の「化学物質管理区分」を定めて管理しています。

含有化学物質報告書と分析データ

EU RoHS指令※1をはじめとした各国の製品含有化学物質の使用禁止規制の適合を目的に、新規に採用する部品・材料を納入いただくお取引先様に「含有化学物質報告書」を提出いただいております。「含有化学物質報告書」では、化学物質管理区分のうち使用禁止物質(全面的、条件付)および使用禁止候補物質について含有状況を確認しています。さらに、EU指令の対象10物質※2については分析データも併せて提出いただいています。近年増加傾向にある含有禁止の法規制に対応するため「含有化学物質報告書」を毎年見直しています。

含有量調査

EU REACH規則※3をはじめとした、化学物質の情報伝達や開示を義務づけた法規制に対応するため、シャープはITシステムを活用した含有量調査を実施しています。
収集のツールとして、国際規格IEC62474※4に準拠した情報伝達スキームchemSHERPA※5を活用しています。

化学物質管理区分

化学物質管理区分 説明 備考
全面的使用禁止物質 いかなる用途にも使用できない物質
  • 国内外の法規制や環境ラベルなどにおいて製品への含有が現在規制されている、または将来の規制が見込まれる物質
  • 環境負荷が高いことが周知でかつ代替物質が存在する物質
条件付使用禁止物質 シャープが認めた用途(除外用途)に限定して使用できる物質
使用禁止候補物質 使用禁止物質の候補となる物質
含有していれば、代替化を推進する物質
  • 国内外の法規制等において、近い将来に使用禁止が見込まれている物質
  • 法規制等において、閾値や禁止日、規制用途(除外用途)等が決定されていない為、現時点でシャープ使用禁止物質として明記できないが、法規制等の動向を踏まえて今後シャープが使用禁止にする物質
管理物質 当該物質の含有有無、含有量などを把握する物質
  • 国内外の法規制や環境ラベルなどで、製品への使用状況の開示が求められている、または将来求められる可能性のある物質
  • 製品への使用状況を顧客から求められる、または求められる可能性のある物質

製品に含有される化学物質管理の流れ

製品に含有される化学物質管理の流れのイメージ図
  • 電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関するEU指令。
  • 鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDE、DEHP、BBP、DBP、DIBP。
  • 化学物質の登録・評価・認可および制限に関する規則。
  • 電気・電子業界の製品に含有する化学物質や構成部品に関するサプライチェーンの情報伝達の手順・内容を規定した国際規格。
  • 製品に含有される化学物質の情報をサプライチェーン全体で効率的に伝達することを目的に、経済産業省が主導して開発した情報伝達スキーム。

工場で使用する化学物質の適正管理とリスクマネジメント

シャープは、化学物質による環境汚染や事故のリスクを最小化するとともに、化学物質規制へ適切に対応するため、生産工場で使用・排出される化学物質に関する「プロセスアセスメント制度」の運用と「化学物質の把握・リスクマネジメント」による管理を行っています。

また、環境負荷の最小化と安全確保を徹底するため、化学物質を取り扱う作業者を対象とした教育・訓練および健康診断を定期的に実施しています。

プロセスアセスメント制度

シャープは、新規の化学物質を導入したり、化学物質の取り扱い方を変更したりする際、化学物質の有害性や安全対策などを事前に審査する「プロセスアセスメント制度」を運用しています。本制度では、化学物質の廃棄時の適切な処分、排気ガスや排水の適切な処理、取り扱う作業者の安全確保の方法などを審査し、化学物質を安全に使用するための条件を具体的に評価・決定することで、化学物質の導入から廃棄に至るまでの適正管理と設備の安全対策の徹底を図っています。

また、管理対象の化学物質を「安全衛生」「危険・爆発」「環境保全」の3つの側面からの影響度により、「法禁止物質」「要注意物質」「管理物質」「届出物質」の4区分に分類し、各区分に応じた管理を行っています。

プロセスアセスメント制度で分類される化学物質管理区分

区分 説明
法禁止物質 その製造などが法規制で禁止されているため、代替品の検討が必要となる化学物質
要注意物質 法禁止物質以外の化学物質で、その毒性(急性毒性・癌原性)および危険性(爆発性・引火性)などが著しいことから、シャープが独自に使用禁止と定め、代替品の検討が必要となる化学物質
管理物質 毒性(腐食性・刺激性)および危険性(可燃性・自然発火性)などがあるため、十分な管理をすることでその使用が許可される化学物質
届出物質 毒性および危険性が小さいため、定められた管理を行うことで、その使用が許可される化学物質

化学物質の把握・リスクマネジメント

シャープは、生産工場で取り扱う化学物質について、法規制や地域との協定値より厳しい自主的な管理基準を設けて、対象化学物質の排出量や移動量、大気汚染や水質汚濁物質の濃度・排出量の把握・管理を徹底しています。

PRTR制度対象物質の排出量・移動量

シャープは、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)制度※1に基づいた管理対象化学物質の排出・移動量を把握し報告しています。2024年度は工場単位の年間取り扱い量500kg以上の対象化学物質が日本国内で24物質、海外で5物質※2となりました。

  • 有害性のある化学物質の排出量や移動量などのデータ集計・公表を義務付ける法定制度。
  • シャープが日本の法定制度に基づき管理対象化学物質を定義。

2024年度のPRTRデータ(日本国内)

(kg)

PRTR
No.
化学物質名 取扱量 排出量 移動量 消費量 除去
処理量
大気 水域 土壤 下水 廃棄物等 製品含有等 リサイクル
1 亜鉛の水溶性化合物 1,683 0 0 0 0 1,436 0 247 0
20 2-アミノエタノール 979,764 695 0 0 0 30,159 0 845,775 103,135
44 インジウムおよびその化合物 22,272 0 0 0 0 3,873 2,324 16,075 0
80 キシレン 3,840 19 0 0 0 0 0 0 3,821
83 クメン 560 0 0 0 0 10 0 550 0
135 酢酸2-メトキシエチル 104,000 625 0 0 0 0 0 80,790 22,585
232 N,N-ジメチルホルムアミド 30,774 0 0 0 0 0 0 0 30,774
272 銅水溶性塩(錯塩を除く) 57,413 0 0 0 0 44,074 11,024 1,450 865
343 ピロカテコール(別名カテコール) 2,585 0 0 0 0 2,585 0 0 0
374 ふっ化水素及びその水溶性塩 619,677 1,932 0 0 378 356,340 0 35,101 225,926
401 1,2,4・ベンゼントリカルボン酸1,2-無水物 1,636 0 0 0 0 495 856 285 0
405 ほう素化合物 4,536 21 0 0 0 4,091 73 351 0
412 マンガン及びその化合物 20,595 0 0 0 0 442 20,153 0 0
438 メチルナフタレン 9,868 45 0 0 0 0 9,823 0 0
453 モリブデン及びその化合物 12,190 0 0 0 0 3,274 366 8,550 0
594 エチレングリコールモノプチルエーテル 16,910 1,381 0 0 0 4,847 0 86 10,596
627 ジエチレングリコールモノプチルエーテル 1,329,410 1,983 0 0 0 1,909 0 759,495 566,023
665 セリウム及びその化合物 977 0 0 0 0 977 0 0 0
674 テトラヒドロフラン 6,075 469 0 0 0 1,506 0 0 4,100
677 テトラメチルアンモニウム=ヒドロキシド 1,943,430 202 0 0 0 326,547 0 1,370,031 246,650
691 トリメチルベンゼン 23,183 37 0 0 0 269 0 15,554 7,323
746 N-メチル-2-ピロリドン 124,198 2,595 0 0 0 8,836 0 85,193 27,574
751 2-(2-メトキシエトキシ)エタノール 4,498,117 923 0 0 0 6,382 0 2,882,296 1,608,516
752 1-メトキシ-2-(2-メトキシエトキシ)エタン 14,901 0 0 0 0 11,533 1,828 1,540 0
合計 9,828,594 10,927 0 0 378 809,585 46,447 6,103,369 2,857,888

2024年度のPRTRデータ(海外)

(kg)

PRTR
No.
化学物質名 取扱量 排出量 移動量 消費量 除去
処理量
大気 水域 土壤 下水 廃棄物等 製品含有等 リサイクル
82 銀及びその水溶性化合物 1,057 0 0 0 0 155 902 0 0
300 トルエン 7,933 7,933 0 0 0 0 0 0 0
591 エチルシクロヘキサン 585 410 0 0 0 175 0 0 0
392 ノルマル-ヘキサン 50,314 50,314 0 0 0 0 0 0 0
448 メチレンビス(4,1-フェニレン)=ジイソシアネート 1,488,652 0 0 0 0 28,190 1,460,462 0 0
合計 1,548,541 58,657 0 0 0 28,520 1,461,364 0 0

大気・水域への環境負荷の管理

2024年度の目標 2024年度の実績 自己評価 2025年度の重点取り組み目標
  • 揮発性有機化合物(VOC)の大気への排出量:204t以下(基準年:2010年度)
  • VOCの大気への排出量:67t
★★
  • VOCの大気への排出量:204t以下(基準年:2010年度)
自己評価:
★★★ 目標を上回る成果があった
★★ 目標を達成
★ 一定の成果があった

VOC排出量削減への取り組み

シャープは、揮発性有機化合物(VOC)の大気への排出量が2010年度実績を超えないよう目標を設定(電機・電子業界の自主行動計画に基づく)し、排出量削減に取り組んでいます。2024年度の排出量は67tで、2010年度の排出量204tを下回り目標を達成しました。

VOCの主な排出源である液晶ディスプレイ等の製造においては、高効率な除害設備を設置し、VOC排出量の削減に取り組んでいます。

VOCの大気への排出量

棒グラフ 2010年と核燃の比較

大気・水域への環境負荷の管理

大気・水域へ排出される化学物質について、法規制値や地域との協定値より厳しい自主基準値を設定し、無害化処理や管理を徹底するとともに、地域とのリスクコミュニケーションにも積極的に取り組んでいます。

<大気への排出量の推移(日本国内)>

窒窒素酸化物(NOx)排出量

棒グラフ

硫黄酸化物(SOx)排出量

棒グラフ
  • 一部の事業所でNOx処理施設の運用を見直したため排出量が増加しましたが、公害防止協定を遵守しています。

<水域への排出量の推移(日本国内)>

化学的酸素要求量(COD)汚濁負荷量

棒グラフ

窒素汚濁負荷量

棒グラフ

リン汚濁負荷量

棒グラフ

土壌・地下汚染へのリスク管理

シャープは、化学物質による環境汚染や事故のリスクを最小限に抑制するための独自基準を定め、適切に運用しています。また、化学物質を取り扱う設備には多重の漏えい防止措置を講じるなど、事故や汚染の未然防止に努めています。過去に塩素系溶剤による汚染が確認された工場については、行政などに進捗状況を定期的に報告しています。

取り組み事例

工場排水の採水分析

奈良事業所(奈良県大和郡山市)では、工場排水の採水分析において、事業所単体で毎月実施する自主測定の他、リスクコミュニケーションの一環として行政(大和郡山市)と共同で年4回実施しています。採取した排水をそれぞれで分析し、その結果を持ち寄っての数値確認や意見交換を通して、関係者の円滑なコミュニケーションの醸成に役立てています。

作業風景
工場排水の採水分析