気候変動
気候変動に対する考え方
中期経営方針に基づく気候変動への取り組み
シャープは2024年5月、将来の飛躍に向けた中期経営方針を発表しました。既存ブランド事業では、新たな技術の活用や成長領域での新規事業の立ち上げなど、事業変革を進めます。また、新産業では、技術力強化による付加価値向上と事業領域の拡大で新たな事業機会の獲得を目指します。
気候変動への対応として、既存ブランド事業では、家電 × AIによる新たな顧客体験の創出や、カーボンニュートラル関連需要の拡大を捉えた新商材の展開など、事業変革に取り組んでいきます。一方、新産業では、これまでのホームやワークプレイスに加え、「モビリティ」もひとつの生活空間として捉え、EVエコシステムの構築など新たな価値創出に取り組んでいきます。
シャープは、ビジネスパートナーとの連携をより一層強化し、それぞれの取り組みのスピードを一段と加速させることで、飛躍的成長と気候変動対応を同時に進めていきます。
気候変動に関するイニシアティブなどへの参画
シャープは、気候変動への取り組みを確実なものにするため「SBTイニシアティブ※1(Science Based Targets Initiative)」に参加しています。当社はこれまでSBT WB2℃※2(well-below2℃)の認定を取得していましたが、2024年3月にSBT 1.5℃※3の認定を取得しました。今後、カーボンニュートラルへの取り組みをさらに加速させ、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量の削減に向けて、サプライヤーとの協働取り組みを推進し、SBTネットゼロ※4の認定を目指します。また、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーへ転換する計画を進めており、国際的なイニシアティブ「RE100 ※5」への参加を目指しています。
日本国内においては、引き続き「電機・電子温暖化対策連絡会※6」や「GXリーグ※7」に参画し、業界、産・官・学での協働取り組みを進め、社会全体としてのカーボンニュートラルに向けた取り組みに貢献していきます。
- 国連グローバル・コンパクト(UNGC)、CDP、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)による気候変動に関するイニシアティブ。企業に対し、パリ協定に準拠した科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標を設定することを推進。
- 産業革命前からの世界平均気温上昇を2℃より⼗分低く抑える目標。
- 産業革命前からの世界平均気温上昇を1.5℃に抑える目標。
- 1.5℃水準の削減目標を設定し、残余排出量と炭素除去を釣り合わせることが求められる。
- 企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ。
- 電機・電子関連業界の一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)や一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)などの参加企業で構成。カーボンニュートラル行動計画をはじめ、地球温暖化防止に関する業界共通の取り組みを推進。
- 2050年カーボンニュートラル実現と社会変革を見据えて、グリーントランスフォーメーション(GX)ヘの挑戦を行い、現在および未来社会における持続的な成長実現を目指す企業が、同様の取り組みを行う企業群や官・学と協働する場。
バリューチェーン全体の温室効果ガス排出量削減
シャープのバリューチェーン全体における温室効果ガス排出量は、自社活動による排出(スコープ1+2)が5%、素材調達や輸送、販売した製品の使用に伴う排出など自社活動範囲外での間接的な排出(スコープ3)が95%を占めています。そのため、製品製造など自社活動の環境負荷低減の取り組みはもとより、素材調達やお客様が製品を使用する際の環境負荷低減(製品の省エネ)など、バリューチェーン全体での温室効果ガス排出量の削減を重要課題として認識しています。
自社活動における温室効果ガス排出量削減施策として、生産拠点の省エネ(事務所照明のLED化、外調機・空調システムの効率化など)を推進しています。また、事業所への太陽光発電システムの導入を計画的に実施し、2023年度はタイと中国の工場に導入した太陽光発電システムの本格稼働により、国内外17拠点で太陽光発電システムが稼働しています。さらに、社用車の電気自動車(EV)化も進めており、英国やスウェーデンなど欧州の生産・販売拠点を中心にEVへの置き換えや充電ポイントの整備などを進めています。
素材調達においては、お取引先様との連携をより一層強化し、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいきます。輸送分野では、モーダルシフト(トラック輸送から船舶・鉄道など環境負荷の低い輸送への切り替え)を継続的に推進するとともに、陸揚げ地の最適化や部品調達先の見直しなどに取り組んでいます。
シャープのバリューチェーン全体で最も多くを占める、製品使用に伴う温室効果ガス排出量削減に向けては、環境配慮型製品・デバイスの創出を積極的に進めています。環境に配慮した製品・デバイスを「グリーンプロダクト」「グリーンデバイス」と定め、開発・設計指針をまとめたガイドラインを策定・運用し、製品の環境配慮性を継続的に高めています。
シャープの温室効果ガス排出量の割合(2023年度)
再生可能エネルギーの普及拡大による社会への貢献
「電気を消費するモノをつくるメーカーの責任として、いつか電気そのものをつくる存在になりたい」。この決意のもと、シャープは1959年から太陽光発電に取り組んできました。住宅用をはじめ、灯台や人工衛星などの過酷な条件下での発電から世界中のメガソーラー発電所など、半世紀以上にわたる取り組みはさまざまな領域に広がっています。2024年1月には、シャープ製薄膜化合物太陽電池を搭載した宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型実証機「SLIM」が月面への「高精度着陸」に成功し、着陸後も太陽電池が正常に稼働したことが確認されました。
シャープは社会のあらゆる分野で再生可能エネルギーのさらなる普及拡大を図り、脱炭素社会の実現に貢献していきます。
TCFDに基づく情報開示
TCFD提言への対応
金融システムの安定化を図る国際的組織である金融安定理事会(FSB)によって設置された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は、気候変動に関するリスク・機会を企業などが情報開示することを推奨する提言を2017年に公表しました。シャープはTCFDの提言への賛同を表明するとともに、TCFDのフレームワークに沿って、気候変動に関する情報開示の拡充を図っています。
1.ガバナンス
気候関連の問題は「サステナビリティ委員会」の委員長である代表取締役社長 兼 CEOが監視、監督責任を持っています。「サステナビリティ委員会」は委員長以下、経営幹部、本社機能部門、事業本部・子会社などで構成されています。委員会では、気候変動をはじめとしたESGに関する方針やビジョンの徹底、施策についての審議・推進、社会課題に関する最新動向の共有などを実施しています。
委員会における経営層によるモニタリング・レビューを通じて、気候変動に関する取り組みを継続して強化し、持続可能な社会の実現への貢献を目指しています。
2.戦略
シャープは「気候変動」を中長期的なリスクと機会の一つとして捉え、関連リスクおよび機会を踏まえた戦略と組織のレジリエンスについて検討するために、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による気候変動シナリオ(1.5℃シナリオ※1および4℃シナリオ※2)を参照してシナリオ分析を実施して、2050年までの長期的な影響を考察しました。
3.リスク管理
シャープは、ビジネスリスクマネジメントの基本的な考え方を定めた「ビジネスリスクマネジメント規程」に基づき、気候関連リスクの特定や評価を行っています。将来予測される気候シナリオの分析により、発生する確率が高い気候関連リスクの抽出を行い、経営幹部およびリスクマネジメント事務局である内部統制部へ必要に応じて事案内容を報告し、関係部門と連携して必要な改善策を検討しています。
4.指標と目標
シャープは、1992年に定めた環境基本理念「誠意と創意をもって『人と地球にやさしい企業』に徹する」の下、2019年に長期環境ビジョン「SHARP Eco Vision 2050」を策定しました。「気候変動」「資源循環」「安全・安心」 の3つの分野で2050年の長期目標を設定し、持続可能な地球環境の実現を目指しています。世界的に喫緊の課題となっている「気候変動」については、2030年の自社活動のCO2排出量ネットゼロを目指して、取り組みを加速しています。
- IEAのNet Zero Emission 2050シナリオ、IPCCの第6次評価報告書(AR6) SSP-1 1.9シナリオなどを参照。
- IPCCの第5次評価報告書(AR5)のRCP 8.5シナリオなどを参照。
温室効果ガス排出量の進捗状況(2023年度)
基準年(2021年度実績) | 2023年度実績 | 基準年比 |
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1,365 千t-CO2 | 1,175 千t-CO2 | 13.9%削減 |
当社の事業におけるリスク・機会と対応策
シナリオ | 要因 | 変化 | 当社への影響 | リスク・機会 | 財務影響 | 影響が顕在化する時期※ | 当社の対応策 |
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1.5℃ | カーボンプライシングの導入 | 原材料調達コストの増加 | 当社の仕入製品に対して炭素税が導入されることで、仕入価格に転嫁される | リスク | 大 | 短期 |
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直接操業コストの増加 | 当社が排出するスコープ1,2の排出量に応じて炭素税が導入され、支払コストが増加する | リスク | 大 | 短期 |
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サプライチェーン上の脱炭素・環境配慮要請の高まり | ユーザーの環境配慮ニーズを満たさないことによる競争力の低下 | 環境配慮についてユーザーの期待に応えられない場合、売上高減少のリスクが発生する | リスク | 中 | 短期 |
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環境配慮資材への切替コストの増加 | CO2排出量が少ない電炉材や再生プラスチック、バイオマスプラスチックなどへの切り替えを進めていくに当たり、コストが増加する | リスク | 中 | 中期 |
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再エネへの切り替えによるエネルギー調達コストの増加 | 自家発電やPPA(Power Purchase Agreement)、再エネメニューへの切替、環境価値証書の購入を進めることでコストが増加する | リスク | 小 | 中期 |
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再生可能エネルギー市場の拡大 | 再エネ発電事業者・利用企業からの太陽光発電関連製品・システムに対する需要の拡大 | 当社の製品・システム提供を拡大することで、収益拡大の可能性が高まる | 機会 | 中 | 短期 |
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ZEH(Zero Energy House)需要の拡大 | 住宅向けの太陽光発電定額サービスやHEMS(Home Energy Management System)の提供を強化し、収益拡大の可能性が高まる | 機会 | 中 | 短期 |
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環境貢献ビジネスの拡大 | サーキュラーエコノミー型ビジネスモデルの拡大 | 脱炭素の取り組みが社会的に高まる中で、廃棄物を出さないサーキュラーエコノミー型のビジネスモデルを確立することで、顧客支持の拡大につながる | 機会 | 小 | 中期 |
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4℃ | 気象災害の激甚化 | サプライチェーンの寸断 | 気象災害が激甚化することで、当社の仕入先、拠点が被災し、サプライチェーンが影響を受け、当社の販売機会喪失が懸念される | リスク | 中 | 長期 |
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- 短期:3年以内、中期:2030年頃、長期:2050年頃に顕在化し始めると想定。
GHGプロトコルに基づく温室効果ガス排出量
シャープはGHGプロトコル※1に基づく温室効果ガス排出量を算定し、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいます。
- 世界の有力企業が加盟する「持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)」と米シンクタンク「世界資源研究所(WRI)」が定めた温室効果ガス排出量を算出するための国際基準。
スコープ1,2,3の温室効果ガス排出量(2023年度)
カテゴリ | 排出量 (千t-CO2) |
備考 | |
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スコープ1(事業活動からの直接的な温室効果ガス排出) | 290 | 燃料などの使用に伴う排出 | |
スコープ2(事業活動でのエネルギー使用による間接的な温室効果ガス排出) | 885 | 電力などの使用に伴う排出 ロケーション基準(各地域の平均的な排出係数をもとに算定)では1,005 |
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スコープ1+2 計 | 1,175 | ||
スコープ3(事業活動範囲外での間接的な温室効果ガス排出) | 1.購入した物品、サービス | 2,480 | 当該年度に販売した主要製品※2の調達部材の生産に関わる排出 |
2.資本財 | 130 | 資本財(設備、機器、建物、施設、車両など)の建設・製造および輸送に伴う排出 | |
3.スコープ1,2に含まれないエネルギー関連活動 | 219 | 他者から調達している電気や熱などの生成に必要な燃料の調達(資源採取、生産および輸送)に伴う排出 | |
4.輸送・流通(上流) | 164 | 部材、生産した製品の輸送に伴う排出 | |
5.事業から発生する廃棄物 | 2 | 廃棄物処理に伴う排出 | |
6.出張 | 19 | 全従業員の出張に伴う排出 | |
7.従業員の通勤 | 17 | 全従業員の通勤に伴う排出 | |
8.リース資産(上流) | - | スコープ1,2の排出量に含む | |
9.輸送・流通(下流) | 63 | 当該年度に販売した主要製品※2の小売店から最終消費者までの輸送に伴う排出 | |
10.販売した製品の加工 | 201 | 製品出荷先での加工に伴う排出 | |
11.販売した製品の使用 | 19,110 | 当該年度に販売した主要製品※2の使用に伴う排出※3 | |
12.販売した製品の廃棄 | 763 | 販売した家電4品目※4、複写機、複合機、パソコンのリサイクル処理に伴う排出とエアコン廃棄時の冷媒の排出 | |
13.リース資産(下流) | - | 対象外 | |
14.フランチャイズ | - | 対象外 | |
15.投資 | - | 対象外 | |
スコープ3 計 | 23,168 | ||
スコープ1+2+3 合計 | 24,343 |
- 薄型テレビ、エアコン、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機、空気清浄機、プラズマクラスターイオン発生機、レンジ、複写機・複合機、太陽電池モジュール。
- 各製品の年間消費電力量×販売台数×製品寿命×CO2排出係数。2023年度実績より算定方法を見直し。
- テレビ(ブラウン管・薄型)、エアコン、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機。
事業活動に伴う温室効果ガス排出量の削減
2023年度の目標 | 2023年度の実績 | 自己評価 | 2024年度の重点取り組み目標 |
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★★ |
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シャープは、世界的に喫緊の課題となっている「気候変動」について、2030年の自社活動のCO2排出量ネットゼロを目指して、事業活動に伴う温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいます。2023年度のシャープの事業活動に伴う温室効果ガス排出量は、基準年度比13.9%減少の1,175千t-CO2となりました。
各工場では生産設備をはじめ、電気・ガス・水などを供給するユーティリティ設備に至るまで、あらゆる設備に踏み込んでエネルギー使用の効率化を推進し、温室効果ガスの排出量を削減しています。特に液晶ディスプレイや電子部品などを製造する工場は多くのエネルギーを消費することから、生産・技術・環境部門が連携して固定エネルギーの削減に取り組んでおり、インバーター※1機器の導入やクリーンルーム※2空調の最適化などを実施しています。
今後も、設定した目標の達成に向け、自社工場/事業所への太陽光発電システムやFEMS※3の導入、生産ラインの効率化、ユーティリティ設備における省エネ機器の導入などに積極的に取り組んでいきます。
- モーターの回転数を制御する装置。
- 温度・湿度・清浄度が一定に保たれた部屋。
- Factory Energy Management System.
事業活動に伴う温室効果ガス排出量の推移
温室効果ガス排出量の地域別内訳(2023年度)
- HFC類、PFC類、六フッ化硫黄(SF6)、三フッ化窒素(NF3)。
生産拠点における温室効果ガス排出量の削減取り組み
中国の生産拠点WSECでは、工場の空調設備について電子制御システムの改修や全体最適制御を実施するとともに、工場内すべての照明を蛍光灯からLEDランプへ置き換えました。また、エアコンプレッサーについては、熱エネルギーを回収して省エネを図るとともに、一部の設備を高効率な機器に更新しました。さらに、工場の屋根に出力規模2MW-dc、年間発電量2,363MWhの太陽光発電システムを設置しました。これらの取り組みにより、2023年度は約4千t-CO2の温室効果ガス排出量を削減しました。
シャープは国内外の拠点において、省エネの取り組みや太陽光発電システムの導入などを積極的に推進し、グローバルでの温室効果ガス排出量の削減を進めていきます。
製品のライフサイクルアセスメント
製品のライフサイクルを通じた環境負荷の把握と低減
製品のライフサイクル※1における環境負荷をCO2排出量に換算して定量的に把握するライフサイクルアセスメント(LCA)を実施し、その分析結果を製品企画・開発に活用しています。
一般的に家電製品は「使用時」の環境負荷が大きいことから、省エネ性能の向上に注力することで環境負荷の低減を効果的に進めています。4K※2液晶テレビにおいては、省エネ性能の向上とともに製品の軽量化にも取り組み、環境負荷の低減を実現しました。
4K液晶テレビのLCAデータ
- 素材などの調達から、製造、輸送、使用、廃棄、リサイクルまでの製品の生涯。
- 現在放送されているフルハイビジョン(1,920×1,080ピクセル:約207万画素)に比べて4倍の解像度(3,840×2,160ピクセル:約829万画素)をもつ、高精細な映像規格。
- 使用時のCO2排出量は電気事業低炭素社会協議会公表のCO2排出係数(調整後)を使用して算出。
再生可能エネルギーの活用
シャープは脱炭素社会の実現に貢献するため、国内外の生産拠点への太陽光発電システムの導入やグリーン電力の利用など、再生可能エネルギーの活用を進めています。2023年度はタイと中国の工場に導入した電力購入契約(PPA)※の本格稼働により、グリーン電力の購入量が1,458万kWhと大幅に増え、太陽光発電システムによる自家発電量は449万kWhでした。また、2023年度から亀山工場とベトナムの工場で非化石証書の購入を始めました。これらの施策により、電力使用量における再生可能エネルギーの利用率は6%になりました。
- Power Purchase Agreementの略。企業などが、発電事業者や小売電気事業者から自然エネルギー由来の電力を長期に購入する契約。
生産拠点への太陽光発電システム導入状況
太陽光発電、蓄電池、家電、EVがつながる「Eeeコネクト」システムの提供を開始
シャープは、EV(電気自動車)の充放電が可能なEV用コンバータ<JH-WE2301>を発売し、EVと住宅をつなげるV2Hシステムを構築。太陽光で発電した電気を有効に活用するため、蓄電池との連携や2023年11月にスタートした 家電連携に加え、新たにEVもつながる「Eeeコネクト」システムの提供を2024年3月から開始しています。
本システムでは、太陽光発電、蓄電池、EVの3連携制御により、従来の太陽光発電と蓄電池に加え、EVの充放電も一括制御できます。太陽光で発電したクリーンな電気は直流(DC)のままEVに充電するため、発電した電気を効率良く自家消費するほか、太陽光由来の電気をEV走行に最大限活用できます。
今回発売したEV用コンバータは、業界最小・最軽量※1のサイズで住宅の壁に設置できるため、スペースが限られる駐車場でも設置することが可能です。
また、エネルギー機器を自動で賢く制御するクラウドHEMS※2サービス「COCORO ENERGY」においても、EV連携機能を新たに搭載します。台風などで気象警報が発令されると、蓄電池だけでなくEVにも充電することで停電に備えられる「気象警報連携」に対応します。
本EV用コンバータには、機器保証に加えて、コールセンターによる24時間365日対応、自然災害補償、偶発事故に対する損害補償等の有償サービスをご用意※3。万が一、夜間にトラブルが発生したときにもお問い合わせいただけるほか、落雷・台風・充放電コネクタ※4の落下といった偶発事故で破損した場合なども補償対象となるため、購入後も安心してお使いいただけます。
シャープは、太陽光発電、蓄電池、家電、EVがつながる「Eeeコネクト」システムと、アフターサービスも含めたトータルソリューションを提案することで、今後も再生可能エネルギーの普及拡大に貢献していきます。
- 太陽光発電と蓄電池とDC連携可能なV2Hシステムにおいて。シャープ調べ(2024年2月15日現在)。
- Home Energy Management Systemの略。住宅で使用するエネルギーを管理・制御するシステムです。
- シャープエネルギーソリューション株式会社、損害保険ジャパン株式会社、SOMPOワランティ株式会社が連携した有償サービスです。
サービスを受けるには、損害保険ジャパン株式会社が提供する動産総合保険(有償)へ加入が必要です。 - EV用コンバータにおけるEVとの接続部のこと。
「Eeeコネクト」とは
「Eeeコネクト」の3つのEは、Energy、Environment、Economyを表現しています。機器やサービスを“いい(良い)”感じにつなぐことで、太陽光で生み出されたクリーンなエネルギー(Energy)を、地球環境(environment)に配慮し、経済的(economy)に活用できます。
太陽光発電システム、クラウド蓄電池システム、V2Hシステム、クラウドHEMSサービス、家電、住設機器を連携させ、太陽光で発電した電気を有効活用するシャープ独自の住宅用エネルギーソリューションです。
1959年に太陽電池の開発に着手し、60年以上もエネルギー事業に取り組むとともに、先進のAI技術を開発するシャープだからできるトータルソリューションです。
シャープ製薄膜化合物太陽電池を搭載したJAXAの小型実証機「SLIM※1」が月面への「高精度着陸」に成功
シャープが開発・製造した薄膜化合物太陽電池を搭載し、誤差100m以内の「高精度着陸」を目指していた宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)の小型月着陸実証機「SLIM」が、2024年1月20日未明、月面への「高精度着陸」に成功し、着陸後も太陽電池が正常に稼働したことを確認しました。
シャープは、1967年より宇宙用太陽電池の開発に着手し、1976年に実用衛星「うめ」に初搭載されました。以降、JAXAの認定を受けた国内唯一の太陽電池メーカーとして、約半世紀にわたり宇宙用太陽電池の開発、製造に取り組んでおり、これまでにシャープ製太陽電池を搭載した人工衛星は、約190基※2にのぼります。
「SLIM」に搭載している薄膜化合物太陽電池は、シャープがNEDO※3の支援を受け2022年に当時世界最高※4の変換効率32.65%※5を達成した化合物3接合型太陽電池モジュール※6と同様の技術で開発。薄いフィルムで太陽電池セルを封止した構造のため、軽量かつ曲面への搭載も可能なフレキシブル性を備えており、高効率化と軽量化が求められる宇宙用途に適した仕様を実現しています。
シャープは今後も、宇宙用太陽電池の研究開発を進め、JAXAをはじめとする人工衛星や宇宙探査プロジェクトに貢献していきます。
「SLIM」搭載薄膜化合物太陽電池の概要
構造 | シート出力 | シートサイズ | シート搭載数 |
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20.9W | 縦297 × 横271 × 厚さ0.25mm 質量約41g※7 |
26シート (総出力約540W) |
- SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)はJAXAが開発した小型月着陸実証機で、将来の月惑星探査に必要な高精度着陸技術を小型探査機で実証する計画。
- 2023年11月末現在。
- 2国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構。
- 2022年6月6日時点、研究レベルにおける太陽電池モジュールにおいて(シャープ調べ)。
- 2022年2月、国立研究開発法人産業技術総合研究所(世界の太陽電池の公的測定機関の一つ)により、確認された数値(モジュール面積:965cm2、最大出力:31.51W)。
- インジウムやガリウム、ヒ素など、2種類以上の元素からなる化合物を材料とした光吸収層を3層重ね、各層で異なる波長の光を吸収させることで、高い変換効率を実現する太陽電池。
- 搭載シート合計では約1.07kg。
シリコン積層型太陽電池モジュールで世界最高※1の変換効率33.66%※2を達成
シャープは、NEDO※3の「移動体用太陽電池の研究開発プロジェクト※4」において、化合物2接合型太陽電池モジュール※5とシリコン太陽電池モジュールを組み合わせた積層型太陽電池モジュールで、世界最高の変換効率33.66%を達成しました。
本モジュールの変換効率は、シャープが2022年にNEDOのプロジェクトで達成した世界記録32.65%を更新するものです。試作した太陽電池モジュールは、化合物2接合型太陽電池セルをトップ層に、シリコン太陽電池セルをボトム層に配置した新構造により、さまざまな波長の光を効率的にエネルギー変換できることから、高効率化を実現しました。また、化合物2接合型太陽電池の厚さは従来の化合物3接合型太陽電池から3分の1以下に薄層化できるため、材料コストの低減が図れます。
シャープは今後も、電気自動車や宇宙・航空分野などの移動体への搭載に向けて、引き続き太陽電池モジュールの高効率化および低コスト化に関する研究開発を進めます。
- 2023年10月27日現在、研究レベルにおける太陽電池モジュールにおいて(シャープ調べ)。
- 2023年2月、国立研究開発法人産業技術総合研究所(世界の太陽電池の公的測定機関の一つ)により、 確認された数値(モジュール面積:775cm2、最大出力:31.51W)。
- 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構。
- 件名:太陽光発電主力電源化推進技術開発/太陽光発電の新市場創造技術開発/移動体用太陽電池の研究開発(超高効率モジュール技術開発)。東京大学および豊田工業大学との共同研究テーマに関わる。
事業期間:2020年度~2024年度。 - インジウム・ガリウム・リンをトップ層、ガリウム・ヒ素をボトム層とする化合物2接合型。
ミネベアミツミ※1のフィリピン共和国に所在する生産工場の敷地に自家消費型太陽光発電システムを設置
シャープは、ミネベアミツミ株式会社(以下、ミネベアミツミ)のフィリピン共和国セブ島ダナオ市に所在するセブミツミ工場の敷地に太陽光発電システムを設置しました。
2023年10月19日に同工場にて竣工式が実施され、運転を開始しました。
本システムの出力規模は約7.9MW-dcで、フィリピン共和国の日系工場に設置された自家消費型の太陽光発電システムの設置容量としては最大級※2となります。年間予測発電量は、約12,806MWh/年となり、約6,833t-CO2/年の温室効果ガスの排出量削減に相当します。発電した電気は工場内で使用し、系統電力の利用削減にも貢献します。
ミネベアミツミでは、温室効果ガスの排出量削減を推進する環境方針のもと、世界各国の自社拠点への太陽光発電システムの導入を推進しています。シャープがミネベアミツミの工場に対して太陽光発電システムを設置するのは、タイ王国に次いで本件が2か国目となります。
シャープは今後も、再生可能エネルギーのさらなる普及拡大に貢献していきます。
自家消費型太陽光発電システム概要
設置場所 | 出力規模 (モジュール容量) |
年間予測発電量 | 温室効果ガス排出削減量 | 運転開始日 |
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セブミツミ工場 (フィリピン共和国セブ島) |
約7.9MW-dc | 約12,806MWh/年 (初年度) |
約6,833t-CO2/年 (相当) |
2023年10月19日 |
- ベアリングなどの機械加工品、モーター、アナログ半導体、計測機器などの機械・電子部品の開発ならびに製造を手掛ける企業(本社:長野県北佐久郡、代表取締役 会長 CEO:貝沼由久)。
- 2023年10月19日時点(シャープ調べ)。
輸送における環境負荷低減
日本国内輸送における環境負荷低減
シャープは、「省エネ法※1」で求められる「エネルギー消費原単位の年平均1%以上改善」への遵守はもとより、環境負荷と輸送コストの抑制に向け、日本国内のシャープグループ全体で取り組んでいます。
2023年度の国内シャープグループの貨物輸送に伴う温室効果ガス排出量は11千t-CO2となり、シャープ(株)の直近5年間(2019~2023年度)のエネルギー消費原単位は年平均3.1%の改善となりました。また、モーダルシフト※2に継続的に取り組み、トラック輸送から船舶(内航船)や鉄道(JRコンテナ)など環境負荷の低い輸送への切り替えを進めています。さらに、輸入製品を各地域での販売比率に応じて最適港に陸揚げすることで物流拠点間での再輸送を抑制するなど、輸送における環境負荷の低減に取り組んでいます。シャープは輸送において、国土交通省ならびに公益社団法人鉄道貨物協会が制定する「エコレールマーク※3」の企業認定を取得しています。
- エネルギーの使用の合理化等に関する法律。
- 貨物輸送をトラック輸送から環境負荷の低い船舶・鉄道輸送に切り替えること。
- 鉄道貨物輸送を一定以上利用している企業や製品に対して認定され、製品パッケージやカタログなどへのマークの表示を通じて、環境に配慮した輸送手段を採用していることを周知。
貨物輸送に伴う温室効果ガス排出量の推移(日本国内)
海外輸送における環境負荷低減
シャープは、海外輸送に伴う温室効果ガス排出量の削減にも取り組んでいます。具体的には、モーダルシフトの推進による航空輸送の削減や積載効率の向上に加え、生産拠点と消費地を結ぶ海上ルートおよび陸揚げ地の最適化、さらには工場により近いサプライヤーからの部品調達に切り替えるなど、幅広い取り組みを進めています。
2023年度のシャープの海外輸送に伴う温室効果ガス排出量は、112千t-CO2となりました。